いやぁ〜、今回は久しぶりに参った。まあ参ったって言っても、ターゲットが釣れたことは釣れたんだけどねぇ。この日の狙いは、ルアーで最もこの時期釣りやすくなる根魚の代表格であるカサゴだ。
ようやく完全に春という雰囲気が世間にも漂い始め、伊豆半島の桜も開花を始めていた。この手漕ぎボートの連載では、必ず毎回違ったフィールドでチャレンジする事が、K哲編集長から義務づけられている。
しかし、前回の川奈でもそうだったが、意外と海で冬場に手漕ぎボートの貸し出しを営業している所は多くないんだ。だからおのずと場所は限られてくる。特に冬は風の強い日が多く、朝の一時しか釣りが出来ないことがほとんどだ。結局は天気図とにらめっこしながらの釣行となってしまうのである。
今回も何度か計画はしていたのだが、ことごとく週末の悪天候に悩まされながら、締め切りの日は迫ってきていた。「明日は大丈夫だ!」って言える天気の日がようやくやってきて電話したのは、西伊豆の田子湾にあるせのはまボートさんだ。
「もしもし、ソルト&ストリームというルアー雑誌の取材をしたいのですが、最近カサゴは釣れていますか?明日お邪魔したいのですがボートは空いていますか?」
「ソルト&ストリーム?」
「桃園書房で出版しているんです」
「ああ、こないだもつり情報さんが来てましたよ。どうぞどうぞ。でも最近カサゴを狙っているお客さんはいないねぇ」
「そうですか。まあ、そろそろいい時期だと思うんで、とにかくやってみますよ。朝は7時からでいいんですか?」
「いやぁ、7時には海藻採りの仕事を始めちゃうから、6時には来て欲しいなぁ」
「6時ですかぁ?!分かりました」
6時にボートを出せるようにするには、えっと、小田原を3時過ぎには出ないと間に合わないじゃん。最近忙しくて睡眠不足なのにぃ。まあこれも仕事だと思いながらも、現地へ定刻通りに到着した。
ボート乗り場の横では、せのはまボートの御夫妻が網から魚を外している。何か嫌な予感。
「おはよう、カサゴいたよ。どうかなぁと思って昨日網を仕掛けておいて、今朝たった今揚げてみたんだけど、ちゃんと入ってたからいるんだねぇ。この裏側でやってみて」
この時は素直にひと安心したのだが、ポイントへ行ってみて顔面蒼白になってしまった。なんと、その網を仕掛けておいた場所は、ほんの15mほどしかカサゴのいそうな岩場が無いんだ。周りを見渡しても砂地ばかりで、カサゴが釣れそうな可能性のありそうな場所は無い。
取り敢えず間違って釣れるかもしれないとキャストしてみたが、予想通りベラやフグすら反応が無い状況だった。なんてこったい!
早々にこの網を入れるまではカサゴがいた?ポイントを諦めて、別の可能性のある場所を探すために移動することにした。しかし、ほとんどの場所が砂や泥の中に、役に立たない小さな石があるだけ。堤防の際でも全く反応は無かった。
困ってしまい周りを見回すと、手前側の堤防脇にある岩場に気が付いた。大きめの岩場がゴロゴロしていて、いかにもカサゴが潜んでいそうなシチュエーションだ。ただ、湾の外からの水が出入りする場所があるため、非常に水の透明度が高い。しかも水深はほんの1〜2mほど。わずかな望みをかけて、その岩場で岩陰をダイレクトに攻めてみた。
ボートを狙った岩に近づけて、ピッチングで順番に岩陰を直撃していく。すると早速大きめの岩陰へ落とし込んで着底した瞬間に、ハイパーバスのロッドティップが一気に引き込まれた。
岩の頭にラインが擦れるとブレイクするので、ロッドを横向きに寝かせて引きずり出すようにファイトした。カサゴの割に元気がいいのは、水深が浅いせいもあるのだろう。そのまま一気に抜き上げて、無事に本命25cmのカサゴをキャッチ。その後もポンポンと釣れて、アッという間に4尾を釣る事ができた。
しかし、その快進撃もそこまでだった。この日は大潮だった。みんなも知っての通り、春の大潮って潮の干満が大きいんだよね。この日だけ特別なんて事はあるはずが無く、無念にも潮位は下がってしまった。このままいるとボートが出られなくなりそうだったので、諦めてそのポイントを後にした。
この日の正直な感想としては、決してカサゴの多い場所ではないと感じたことだ。網を仕掛けただけでポイントを探すのが大変になってしまい、しかも思ったほど風の影響を避けられなかった。
無理して春のカサゴを狙うより、秋まで待って青物の回遊を期待した方がいいような気がした。いずれにしても手漕ぎボートのルアーは、場所の選定が難しい。エレキでも堂々と使えればもっと楽なのになぁ!