「家族で楽しくファミリーフィッシング」

エサ釣りなんかつまらない?

 最近にわかに、周囲の動きが面白くなってきた。それはルアーアングラーが、エサ釣りに興味を示し始めたこと。今までなら多くのルアーアングラーから、「エサ釣りなんかつまらない」とか、「エサで釣るよりもルアーのほうが価値が高い」な〜んて話が聞こえていた。ところが実際のフィールドでは、ルアーロッドを片手にエサ釣りを楽しむアングラーが目立つようになってきたんだ。しかもその多くは、ファミリーフィッシング風だ。

 これらはいったい、どんな現象と判断できるのだろうか。いろいろな方面の話を聞いて分かってきたことは、どうやらルアーフィッシングを続けるため、エサ釣りを仕方なく始めてみたというのが多そうだ。つまり自分自身はルアーフィッシングだけをやりたいのだけれど、年齢を重ねるにつれて、奥さんや子供のことを考え始めたという。毎週のように週末を利用したり、毎夜のごとく自分だけ釣りに出かけることが難しくなってきていると感じ出したようだ。

家族の興味をひこう

 子供が小さいときは我慢していた奥さんも、ご主人ばかりが遊んでいるのはズルイと感じ始める。そうなると家族サービスや、子供をご主人が引き受けて、奥さんには遊びに行ってもらうなどの配慮が必要になってくる。そこでそのひとつの手段として、家族にも釣りを楽しませて、仲間に引き入れてしまったらどうかと考え始める。そうなるととっつきにくいルアーよりは、手軽に釣れそうなエサ釣りから始めさせたほうがいい。せっかく苦労して釣りに連れて行くことに成功したとしても、魚がまったく釣れなければ、家族は二度と一緒には行ってくれないだろう。結局は簡単に釣れそうと感じていたエサ釣りで、家族の興味をひこうと行動をおこすことになる。

 最初のうちは、手軽にルアーのタックルでもやれそうな「ちょい投げが」選ばれる。たとえば伊豆半島にドライブしながら、どこかでのんびりと遊んでくる。その途中でちょっとだけ釣りを楽しむようにする。その「ちょっと」の度合いが重要で、最初からあまり長時間の釣りを強制すると、逆にどんどん嫌いになってしまう。そのさじ加減をうまく調整して、とにかく釣りをやらせること、そして確実に釣れる条件をチェックしておくなどの配慮も重要だ。


アナタはエサ付け担当

 ところが手軽と思っていたちょい投げには、ちょっとした落とし穴がある。そう、シロギスなどを狙うもっとも手軽と思われていたちょい投げでは、エサにジャリメなどの虫エサが使われるんだ。ウニョウニョと動きまわるジャリメを触り、それをちぎってハリに刺すなど、釣りをやらない普通の人にとって、できれば敬遠したくなる作業なんだ。当然ながら、そのエサ付けをやってあげなければ釣りが成り立たない。おそらくアナタは、釣り場でエサ付け担当になることだろう。

 さらに追い討ちをかけるのは、魚が釣れてしまったときだ。家族は初めて釣った魚を、自分でハリ外しなどできないだろう。だからハリから魚を外すのも、当然アナタの役目だ。簡単に外せる状態ならいざ知らず、実際には飲み込まれていたりすると、ハリも簡単に外れない。ハリ外しを使ったり、運が悪ければハリスが切れてしまう。切れないまでも、ハリスがザラザラになったら仕掛けは交換だ。そうなるとこれら一連の作業すべてが、間違いなくアナタの役目になる。

年齢層が高くなってきた

 どうだろうか。これらのすべてをクリアできた人だけが、おそらく家族を釣りに引き込むことができるだろう。そして釣りそのものの楽しさを知ってもらえたとき、そこで初めてルアーにチャレンジさせることができる。今までにも何度かチャレンジしたアングラーはいたのだろうが、まだアナタ自身が若いときには挫折を味わったはず。それは自分が釣りたいから。しかし自分が釣りたいことを優先に考えてしまうと、家族の釣りのサポートは面倒なことになってしまう。最終的には面倒になって、それずらやめてしまう。その後のアナタがどうなるか・・・、もう分かりますよね。釣りに行く回数が極端に少なくなり、「釣りはつまらないもの」と家族にも思われてしまう。場合によっては、釣りをやめろと言われちゃうかも。これが最悪の結末ですよね。

 ところが面白いことに、最近はそのパターンが変わりつつある。ルアーに盛り上がっていた年代も徐々に歳をとり、自分以外の人に釣らせる楽しみが分かるようになってくる。アナタがそうなっていればしめたもの。徹底して家族に釣らせる気持ちになれる。昔と最近の大きな違いは、ルアーアングラーの中心となっていた年齢層が、徐々に高くなってきたことにあると判断できそうだ。落ち着いた年齢層が、そうやって家族をじょうずに釣りの世界へと引き込むことに成功している。

釣りは一生の遊び

 実際にエサ釣りを始めたルアーアングラーの話を聞くと、「最初は抵抗があったけれど、釣りそのものの持っているゲーム性は変わらない」とか、「思っていたよりも難しい面があって、考えさせられる部分が楽しい」といった意見が多い。今までは「井の中の蛙、大海を知らず」といった状態だったけれど、実際にその世界へ飛び込んでみることで、そこにも面白いモノがあったことを再認識できたということなのだろう。

 今ではルアーで魚が釣りにくいとき、エサ釣りを楽しんでお土産を確保するアングラーがかなり多い。釣り場の規制や多くの問題が渦巻く中で、自分自身で楽しさを制限することもないだろう。そういった環境に出会わなかった人はいいとして、もし悩んでいるアングラーがいたら、何度でもこの世界にチャレンジしてみてほしい。釣りは楽しいことが前提の遊びなのだから、少しでも面白いと思ったら、深みにはまってみるのもいいかも知れない。そして家族と一緒に楽しむことができれば、釣りは一生の遊びとして、家族の和を導いてくれるのではないだろうか。