昨年の秋頃から、本屋さんで目に付くのがハンドメイドルアーの本。随分昔ハンドメイドルアーが流行った時期があったけど、今回も同じような感じで一気にハンドメイドの世界を盛り上げようという動きが伝わってくる。世間一般に盛り上がりを見せているのは、ボクの認識だとこれで3回目かな。中でも出版社がこぞって本を出しまくっているのは、今回のブームが最高じゃないかと思う。
高いよねぇ…ハンドメイドって
まず皆さんに聞いてみたいのが、ハンドメイドルアーって本当に欲しい? 必要なの? って事なんです。そう言ってるボクも、リトルトゥイッチャーを市場に出したんだけど、今更ながらハンドメイド業界一般の市場価格の高さには驚いている。リトルトゥイッチャーが\2,500で販売したけど、世の中でのハンドメイドルアーの相場と言ったら恐ろしく高額な物が多い。\3,500なんて当たり前。\10,000円近くするハンドメイドミノーまで市場に出てくる始末。
たしかに丁寧に仕上げて美しく作られているルアーには、それ相応の価値が含まれていると思う。それくらいの価格でも仕方ないとも思う。でもね、そんなに高額なルアーを実際にフィールドでビシバシ使っている人ってどれくらいいるんだろう? 「もったいなくて使えないよ」なんて話も聞くし、それだったら本来のルアーとしての目的から外れちゃうと思う。ルアービルダー自身がどんな位置付けで作っているんだろう? ボクは実際の釣りに使って、たくさんの魚を釣って欲しいから発売したわけなんだけど、いくら綺麗に仕上げたって使えば汚れるし傷もつく。だからと言って、使ってもらえないルアーの立場はどうなるんだろう?
なんで欲しいのか?!
ルアーを購入する時の動機って、2つだと思うんだよね。実際の釣りに使うか、それともコレクションとしてしまっておくか。これに尽きると思うんだけど、最近は妙にハンドメイドブームばかりが先行しちゃって、ただ単に手作りのルアーだよって程度の物もあるようにボクの目には映る。それでもビルダーの思い入れや使い方が分かるような商品なら納得できる。特殊なシチュエーションで使いたいけど、大手メーカーには数の出ない商品を作る意思が無い。それだったら自分で特殊なルアーを作ってやろうと思ったのが、今回ボクが手がけたリトルトゥイッチャーなんだ。
さて、皆さんはコレクターとして購入するのか、それとも実際の釣りで今まで以上に釣りたいから購入するのか。その答えを出すのは、あなた自身なんです。もしあなたが釣りたいから購入するのであれば、ボクと同じ考え方です。数が少ないから欲しいとか、色々なルアーを集めたいからなんて考えだったら、正直言ってボクはちょっとガッカリしちゃうなぁ。だって、使って欲しいから作っているんだもん。大量生産ではできないような大胆な事を、自分自身のポリシーとして持っているから。
ハンドメイドなんだから仕方ない??
今や自分が欲しいルアーは、自分自身の手で作る時代になってきている。自称ハンドメイドビルダーたちも、最近の一般アングラーが作るハンドメイドルアーの仕上がりには舌をまいている方もいるかもしれない。それくらい、普通の人だって知識とテクニックを吸収しようと努力しているんです。「ハンドメイドは高くてもいいんだ」なんてタカをくくっているビルダーの方は、考え方を改めないといけない時期なのかも。ボク自身も、自分でやっていてそう思いますね。
市場にでて、お客さんがルアーを泳がしてみたら横を向いちゃったとか、アイ調整しても真っ直ぐ泳がないバランス最悪のミノーもあると聞きます。購入する人は、ドキドキしながらルアーが手元にくるのを待ちわびているはず。それが期待を裏切るような結果とならないよう、ボクも含めてルアーの製作(あえて生産とは言いません)にかかわっている方々は認識しましょう。どうも見た目の仕上がりにこだわりすぎて、肝心な泳ぎの方がいい加減なまま売られているルアーが多いように感じています。そういった話しも、仲間たちからよく聞かされています。
人によっては、ハンドメイドはそういったバラツキがあるからいいんだとも言いますが、全く泳がないような状態ではその言葉も使えません。ハンドメイドなんだから仕方がないよって言われたら、ビルダーは脳天をハンマーで殴られたようなショックを受けなければなりません。人に商品を売るってそう言う事だと思います。お客さんには分からないだろうなんて考えたらいけないんです。お客さんがいるからこそ、商売は成り立つんです。少なくともビルダー自身の口からは、「ハンドメイドなんだから仕方がないよ」なんて言葉は絶対に聞きたくありません。
大切なのは市場の声
なんだか随分と興奮しながら書き綴っていますが、多くの方にはボクの言いたい事が分かってもらえたんじゃないかなと思ってます。ハンドメイドルアーを購入する皆さん、「ハンドメイドなんだから仕方ない」って言葉は、決して慰め言葉でも誉め言葉でもないんですよ。多少のバラツキがあるのはたしかに仕方が無いかもしれないけど、泳がないのはルアーではないですよ。そうならないように、これからの自分自身にも注意しながら商品を市場に出して行きたいと思います。
大手メーカーだって同じ。お客さんを舐めた商品出したら、いつかはお客さんから無視される時が来ます。良い品物があってこそ、営業戦略で商品の販売が出来るんです。良い品物を作るためには、市場の声にちゃんと耳を傾ける事が大切なんですよ!