昨シーズンのエギング人気は、いまだ記憶に新しいと思う。急激に上り詰めた感のある昼間のエギングだが、実際には小型狙いに終始してしまったアングラーも、かなりの割合を占めているのではないだろうか。毎週のように通っていたフィールドでは、次から次へとアングラーが入れ替わってエギングを楽しんでいた。
今年の実態は?
それでは今年の秋はどうなのか。大多数の予想では、昨シーズンの小型乱獲が影響して、ほとんどアオリイカは釣れないのではないかとの声が挙がっていた。ところが実際にシーズンが開幕してみて、エギを追ってくるアオリイカの数は昨年ほどではないにしても、実際に釣れるアオリイカの数は差が無いように思える。それどころか、例年の秋に比べると、ちょっとばかりサイズが大きい。
これはいったい、どういうことなのだろう。しかもフィールドで釣果が上がり始めている情報がたくさんあるのにもかかわらず、実際にフィールドでエギングをやっているアングラーが極端に少ない。開幕当初だけはそれなりに狙っているアングラーもいたのだけど、いつの間にか減ってしまったという感じを受けたのはボクだけなのだろうか?
この理由を分析しながら考えてみて、ある事実に気が付いた。それは昨シーズンと今シーズンとの、釣り方というか釣れ方の違いだ。ボク自身はボトムを狙うノジングを意識して昼間のエギングをやっていたから、それほど気にはしていなかったことだ。つまり昨シーズンはエギング入門のアングラーが多く、昼間のエギングから始めた人が多かった。すなわちサイトフィッシングの魅力に踊らされてしまい、見えない時はそこにアオリイカはいないと解釈してしまったのではないだろうか?
シャクリのテクニックで底の方から誘い上げて、サイトでアオリイカを興奮させながらエギに抱きつかせるというのが、メディアでも多く取り上げられた昼間のエギングテクニックだった。しかし本格的に狙っているアングラーは、確実に底を取りながら、ボトム付近で乗せている釣果事例が多い。テクニック解説では表現したくなるのだけれど、実際には深場でラインの変化を見ながら、確実にアタリをとって釣っている人が多かったように記憶している。
目先のテクニックにおぼれるな!
ここで大切なのは、あくまでもメディアに露出しているテクニック論は、そのひとつのきっかけであり、かついくつもある基本テクニックの中の一部分であるということだ。かっこいい名前がついているからといって、それだけでアオリイカを常に釣り続けることは難しい。その時々の状況判断こそが、釣果を出し続けるためには、最も重要なことだと忘れてはいないだろうか。
今シーズンの傾向としてボクが把握しているのは、浮いてくる個体の少なさだ。つまり一生懸命誘い上げても、思ったほどサイトフィッシングへ持ち込めるチャンスが多くないということ。たしかに昨シーズンはそれでも釣れたかもしれないだろう。でも乱獲を含む何らかの影響によって、フィールドのアオリイカが昨シーズンより減っているのは事実だと思う。そんな時にいつもまったく同じテクニックだけで攻めていたら、昨シーズンより釣れなくなるのは当然のことだろう。
基本はボトムだということを思い出そう
ボクは以前から何度も繰り返しているけど、「アオリイカを釣るための秘訣はボトムにある!」と表現する。昼間のエギングを提唱し続けている多くのライターさんも、この部分の意見は一致している。つまり底からちゃんと誘い上げないと、昨シーズンでもサイトフィッシングの基本は成り立たないということだ。偶然にもサスペンドしているアオリイカがそこにいれば、そのままそれ以上はエギを沈めずに、アオリイカをキャッチすることができるだろう。
しかしその人にとっては、実は不幸の?の始まりだったのかも知れない。つまりいい条件のときばかりを知ってしまったため、ボトムをチェックするという基本を忘れてしまっているのだろう。人間というのは勝手なもので、良かった時の記憶だけはいつまでも鮮明に残っている。「あの時はこの釣り方で良かった・・・」などと思い続けてしまうと、見えないとき、もしくは誘い上げても浮いてこないときは、そこにアオリイカがいないと思い込んでしまう。それこそが、自然界に成り立っている、ワナなのかも知れない。
実は釣れるんだよ!
先日の取材釣行でも、ちょっとばかり面白い現象に出会った。伊豆半島のある釣り場で、朝から午後2時頃までずっとエギをシャクリ続けていて、まったく何の反応もないというアングラーに出会った。ちょうど片付けて帰ろうとしているところだったので、その後に入らせてもらうことにした。その時点ではどんな釣り方をしていたか分からないが、最初は表層のトゥイッチで誘ってみた。案の定アオリイカからの反応はまったく無かった。
この場所の海底は、一面に海藻が生い茂っている。そして所々には藻穴があり、その周辺がアオリイカのポイントであることは予想がつく。ボクはそこを狙って、藻頭をボトムに見立ててのノジングをやってみた。藻頭より極端にエギを浮き上がらせないように気遣い、何度かステイを意識したシャクリを試してみたのだ。するとあっさり、ラインはスゥ〜ッと引っ張られていく。間をとって大きくあわせると、ズシンという手応えで、あっさりと1kgのアオリイカが浮き上がってきた。8月末でこのサイズなのだから、狙えばちゃんとサイズアップも望めるんだ。その後も続けて、同じ場所で2杯を追加した。
それまで何にも釣れなかったアングラーは、唖然とするのも無理はない。だって狙っている棚が違うのだから。誘い上げることを意識しすぎると、ボトム近辺での操作は緩慢になる。ボクはボトムだけを意識して、藻頭で乗せることを考えて釣っている。その差が実は大きくて、「釣れる」「釣れない」という結果を出すんだよ。シーズン当初からエギングを諦めちゃったアナタ、今シーズンだってちゃんとアオリイカは釣れるんだよ!