2008.09.13〜14  山形渓流釣行秋編


Report by  KO


秋ノボリの大物を求め

 9月になると渓流は最後の1ヶ月ということと、秋ノボリの大物を求める釣り人が大勢押し寄せ、非常に釣りにくくなります。東北だと6〜7月だと源流部はまだ雪渓に埋まっていて遡行できず、8月はメジロアブの猛攻があるため、源流部は例年だと8月の下旬ぐらいから遡行可能になります。8月の末〜9月の頭ぐらいまではまずまずの釣果が出ても、2週間も経つと殆ど釣り切られてしまうというのが現状です。それでもお手軽にまずまずの釣果が出せる水系があるのでそこに行こうと思っていたら、1週間前のTVの釣り番組でまさにその水系で釣りをしていました。これでは人が大勢来るだろうからとても釣りになりそうもない。そこで別の水系にすることにしました。

 今回の釣行はY氏・H氏と兄と私の4人。12日の23時にR4号のコンビニで待ち合わせし、いつも通り下道で米沢に向かう。そこからしばらく走って釣りをする予定の川に向かう。この川は飯豊連峰に源を発し、途中多くの川を合わせて大河川となって日本海に注ぐ。それほど危険な悪場も無く、大物の期待が持てる川としてよく通っていたが、最近ではよく本などにも取り上げられ、以前ほどの釣果は出にくくなった。それでも条件がいい時に釣行すれば、それなりの釣果はまだまだ出ると思う。

 この川では関東はもちろん、福島・新潟・宮城・秋田の釣り人にも良く出会う。関東の人間からすると新潟や秋田なら十分いい川があると思うのだが、よく考えてみれば山形県は北部に鳥海・月山、東に蔵王、西に朝日、南に吾妻連峰・飯豊連峰と名立たる名峰に囲まれ、ここに降る豪雪が春から夏に大量の雪解け水となって山肌を削り、深く谷を刻む。そうして出来た大渓流は大物への期待とともに簡単には人を寄せ付けない厳しさも併せ持つ。八久和川、銅山川など渓流好きなら1度は聞いたことがあるであろう名渓も山形県の川であり、経験のある釣り人以外はとても遡行できない。そんなイメージを釣り人は山形県の渓に抱くのかもしれない。福島にも良い川はたくさんあるものの、同じような感覚で関東の釣り人が大勢押しかけるために釣りにくいし、トラブルも多い。それで我々も山形まで足を伸ばすことになったのだから・・・

枝沢は本流の種沢

 さて、目的の川に到着すると最近雨が多くて水も多いと思っていたのだが、例年に比べるとかなり水が少ない。時期的に難しいのにこの水量ではかなり厳しい釣りになりそうだ。そのせいか先行者も1組のみで、どこでも釣りすることはできる。が、本命の谷は当然場荒れしているだろうから予定通り枝沢に入ることにする。この時期だと9月頭から毎日のように人が入るので、あまり人がやりたがらないような枝沢でないと魚が残っていないのだ。

 予定の川に入ると小さいながら魚が走るのが見えたので早速釣り始めることにした。私と兄は案内に徹し、Y氏とH氏が交互に釣って行く。この川は以前に下流で釣れた魚を上流部に放してあるので、入る人が少なければ魚は残っているはず。

 以前は兄と2人でよく魚を魚止めの上に放流して来た。枝沢は本流の種沢になるし、魚の棲息域が広がればそれだけ魚も多くなるし、いざという時に釣る楽しみも増える。そんな話を本などで知り、共感して始めたのだが、最近はあまりしていない。放流した数年後に行ってそこに魚が生息していてくれたのを見ると思わず頬もほころぶのだが、数年後友人を案内して行くと、場所によってはほとんど魚影も見えず、あるのは引っ掛かった釣り糸と空缶ばかりだったりするのを見ると本当にがっかりした。手の届かない所にある引っ掛かった釣り糸は仕方無いにしても、モラルの低さと魚影の減少は比例する。結局、現在の渓流は漁協にしろ、有志にしろ、誰かが放流してくれたものに頼って釣りをすることになる。それが最近渓流に対する興味が薄れつつある理由でもあるなぁ。

魚止めの主は・・・

 雪代が落ちると川虫がいなくなるのでそれ以降は毛鉤が釣りの中心だ。まず、H氏がちょっと大きめのプールに毛鉤を落とすと早速出た。しかし、バレてしまう。その後もポツポツと反応はあるがどうにも小さい。やっと釣れたと思えば10cmほど。その後もかなりいい場所でもチビイワナしか出ない。これは、もしかしたら毛鉤にスレている可能性が高いと思って私はルアーを取り出してチェックしてみた。すると、20cm前後の魚のチェイスがあったがヒットには至らず。

 そのうちに淵尻で泳いでいる18cmぐらいのイワナが見えたので、Y氏にやってもらった。するとすぐに出たが、これもバレてしまう。その後もまずまずの型がルアーにはチェイスし、急に魚影が出だした。これはこの上に遡上止めがあることが多いが、やはり間もなく3m程の滝となった。その下には3つのプールがあり、最初のプールでY氏にアタリ。竿が胴から入ったがバレてしまう。その後は出ない。次にH氏が残り2つのプールをやるが反応無し。そこで私がルアーでやると滝の下のプールでアタリ。魚止めの主は19cmのかわいいイワナであった。おそらくここが魚止めだと思うが、取りあえず兄と2人で滝を巻いて上に入ってみた。そこにはかなりいいプールが連続してあったが反応無し。やはりここが魚止めと見ていい。残念ながら初日は殆ど釣果を出せずに終わってしまった。この後は1時間かけて下り、温泉に入って買い出し後キャンプでの酒宴となるのであった。

減少の最大の理由は・・・

 2日目は6時に起きてゆっくりと朝食を摂ってから撤収し、峠を越えて次の水系に向かう。この日に入ったのも枝沢で、ここも9年ほど前に魚止めの上に放流してある。

 釣り始めてすぐ魚が見えた。そこでH氏が毛鉤を落とすとすぐに出たがまたしてもバレ。その後直ぐ堰堤となったがここでは釣れず、上へ。次の堰堤下でも魚がいたが乗らず。取りあえず魚影があったのでホッとして上流部へ。しばらくしてかなり良さそうな淵でH氏の毛鉤に魚がでた。竿が胴から入る。上がったのは8寸級の良型。みんなが喜んだその瞬間、魚が外れて淵の中へ。ちょっと残念だが魚がいてくれたのは嬉しい限りだ。

 沢の流程は短く一気に源流部へと突き上げて行き、その後も所々いい場所では22cm〜23cmがポツポツ出てくれて、チビも含めて8匹となった。前回の魚止めと思われる場所の上にもいたので、この釣果は前回の放流の効果があったようだ。その後の3m程の滝は右岸を直登する。しかし、この後は魚の反応は無い。次の3段の滝は1段目のナメぎみの滝は右岸を直登し、さらに2段の滝を越えるが反応は無い。沢はさらに高度を増し、稜線もかなり近く、源頭に近い。どうやら最初の3mの滝で魚止めとなったようなので、今回は釣れた8匹をビクに入れてキープしておいたので、3段の滝を越えて少し行ってから放流して来た。このイワナ達がここに居付いてくれることを願わずにいられない。また数年後に様子を見に来たいと思う。今回はここで釣りを終了し、30分程で標高差100m以上を下り、また温泉に入って下道で帰路に着いた。

 渓流魚は一般に触ると弱いと思われていますが、イワナは少しぐらいなら全然平気で放流した場所で繁殖してくれることが多いです。もちろん、大雨で流されてしまうこともありますが、減少の最大の理由は釣り人のキープによるものです。入漁料を払って釣りする以上キープするなとは言えませんが、せめてこのような枝沢に入る時は、どうすれば今後もそこで魚が釣れ続けるのか考えて欲しいものです。