このページは 週刊テレビから発刊されている Hello Fishing
2000/02/24号 に掲載された記事です

春は大型アオリイカのチャンス
 これから春に向かって、段々と暖かくなっていくね。やっぱり寒い中で釣りをするよりは、暖かい方が楽なのはしかたない。ところで春になると俄然面白くなってくるのが、秋にいっぱい釣れたアオリイカだ。秋の小型を数釣りするシーズンに対して、春は産卵前の大型が接岸して釣りやすくなる。そんなアオリイカの大型狙いを紹介しよう。

 秋の小型と異なる点は、明らかに狙いが大物一本に絞れると言う事だね。つまり、秋のように港内で釣るよりは、港の入口などへ産卵のため接岸してくるアオリイカを狙うんだから、それなりのちゃんとしたタックルが必要になる。

 アオリイカの産卵については知っている方も多いだろうけど、基本は藻やハエ根の有る場所を釣る事なんだ。海藻に卵を産み付けるアオリイカにとって、そのような場所がネスト(産卵床)としてベストの場所なのですよ。だからその場所を知っていれば、そこを直撃して釣果確実というわけ。

 そこで理解してもらいたいのは、あくまでも生殖能力のある個体が産卵行動に来ているんだと言う事なんだ。これから産卵しようと集まっているアオリイカを釣っちゃうわけだから、他のシーズン以上に乱獲は慎む意識を持って欲しい。それを頭に入れて納得できる方だけ、ここから先を読んで欲しい。

 さて、この時期の行動パターンだけど、多くのアオリイカは夜の間は港外に出ている。そして、朝夕のマヅメ時のみ、港入口や浅場の産卵床へと戻ってくる。だから夜は一生懸命釣っていても、思ったほどの釣果は得られないはずだ。居ない時にエギをいくらキャストしたって、アオリイカが釣れないのは当たり前だよね。一般には夕マヅメにアングラーが多いけど、朝マヅメはアングラーが少なくて有利な事も付け加えておこうね。

 それと世間で誤解されがちな事実を紹介しておこう。春のアオリイカはエギングでは釣れず、泳がせのエサ釣りでしか釣れないと思っているアングラーが多いと聞く。でも、これって真っ赤な嘘なんだよね。現実のボク達の仲間は、エサ釣りの人よりも確実に釣果をあげている。しかもかなりの短時間でね。

 これには理由があって、エサ釣りの人が釣っている時は、かなりの広範囲を流している。ところが、釣れる場所が特定されている。これは、そこのポイントがちょうど産卵床の上であるからだ。逆にいえば、エギングでもそこを直撃できれば、エサ釣り以上に手返し良くアオリイカを釣る事が出来るってわけ。

 以前はこれが分かってないアングラーが多く、春はエギングでは釣れないなんて話しがまかり通っていたんだ。たしかに棒引きや大きなシャクリでは、点を攻める釣り方は難しい。上手い具合に狙えれば釣る事は出来ていたようだけど、積極的に狙って釣っているアングラーが極端に少なかった。

 ここまで話せば、勘のいい読者の皆さんは分かったよね。早い話が産卵床を直撃して点の攻めが出来る釣り方をすれば、結果がついてくるという事実なんだ。ボク達はそれを意識した操作で、多くの大きなアオリイカと出会うことができている。

 では、その釣り方を簡単に紹介しておこう。今までの話しで分かったと思うけど、ようはボトムの産卵床にジッとしているアオリイカを釣りやすい狙い方だ。これは、アオリイカの居ついている場所を分かっていると言うのが前提の話しだ。

 まずはポイントの真上よりも少し向こう側へキャストして、そのままラインを弛めて沈める。いわゆるフリーフォールだ。これは狙った場所へ確実に沈めるためで、この時期のアオリイカはほとんどがボトムで反応してくるから、ラインを張ったままのカーブフォールの必要性は無いんだよね。

 ボトムに着底したら、しばらくそのままで待つ。そこからがシャクリの始まりだ。ここで重要なのは、いかにしてエギを横移動させないシャクリをするかだ。通常のシャクリだと一度のシャクリで大きく移動してしまう。だから、ナイロンラインの伸びを利用して、瞬間的に短いストロークでピシッとしゃくる。こうすることで、通常はテールを持ち上げた姿勢のエギが、一瞬だけ頭を持ち上げてテールはボトムを叩くような動きをする。

 これがPEラインだと同じような動きを出せなくなるんだ。このロッドの動かし方は、ポイントの水深や水面までのライン角度などによって異なってくる。数多くこなす事で、この感覚を掴んでみよう。とにかくエギが浮き上がらないように意識して、しゃくった時にエギの重さを感じる前にロッドを寝かせてやるようなイメージで操作する。

 一瞬の出来事のようなシャクリなので、横で見ていただけでは真似できないかもしれない。でも、確実に春の大型アオリイカを狙い撃ちできるので、覚えておいて損は無いと思うよ。ちなみにボクがやり始めて一生懸命周りに広めているので、この独特のシャクリ方を周囲ではノジングと呼んでいる。いつの間にか、この名前が定着してしまい、西湘方面では無敵の釣果を誇っている。

 ちょっと話しはそれたけど、エギのカラーについて話しておこう。朝夕のマヅメを狙う事から考えると、必ずしもピンクやオレンジが絶対ではない。ブルーやグリーンといった渋めのカラーが、思いもよらない爆釣を演じる事がある。完全に明るい時間帯だったら、そういった派手でないカラーでチャレンジしてみると面白いよ。但し、薄暗くなってきたらピンクやオレンジに切り替えないと、先に他の人に釣られる可能性もあるけどね。

 それから、この時期のアオリイカは玉網が必需品だ。普段は抜き上げちゃうボクでさえ、この時期だけは玉網を準備している。無理に抜き上げるとロッドが折れちゃうよ!

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