このページは 週刊テレビから発刊されている Hello Fishing
2000/04/06号 に掲載された記事です

ドンコはアワセが難しいのだ!
 ドンコって魚を知ってるかな。正式にはエゾ(蝦夷)アイナメって名前らしいんだけど、常磐から東北方面にかけて多く棲息する魚だ。今回は、その魚を目新しいルアーターゲットとして紹介してみよう。

 釣れると「な〜んだ、ドンコかぁ」なんて嫌がられる事もあるけど、釣り方によっては面白いターゲットなんだよ。投げ釣りやヘチを探っていると、エサ釣りでは案外簡単に釣れる魚なんだけど、これをルアーで狙うとなると話は別。予想外にアワセが難しくて、チャレンジした多くのアングラーが頭を抱えてしまう事すらある。

 最も多く釣れる場所は、やっぱり常磐から東北にかけてのエリアなんだけど、たまには本誌のエリア外の話しをするのも新鮮だよね。ここから先の話は、そういった見方で付き合って下さいね。

 さて、ボクがドンコを狙っている釣り場は、茨城県の日立周辺や、波崎周辺が多い。このエリアは、ドンコの魚影がすこぶる濃い。もちろん他のターゲットも多く、皆さんに一度は訪れて欲しい場所だ。そんな中で、何故ドンコを狙うのか。それは一言、アワセが難しいから。

 魚種によって、人それぞれ様々な楽しみ方がある。ボクはヒットさせてからのファイトよりも、魚をヒットさせるまでの過程を楽しむ事が好きなんだ。極端に言うと、苦労してヒットさせた魚だって、その時点でボクの楽しみはほとんど終わっちゃってるんだ。近くにいる仲間にロッドを渡して、ファイトを楽しんでもらってもいいほど拘らない。

 具体的に、ルアーアングラーから見たドンコってどんなかを、ちょっとだけまとめてみよう。まずは居場所は、適度に水深のある砂泥底の港だ。完全な砂地や岩礁帯ではなく、カレイが多そうな場所に多い。最も釣りやすい個体がそういった港内にいるだけで、実際にはもっと広範囲に生息しているのかもね。

 昼間でも釣れるんだけど、ルアーで釣りやすいのは夜だね。今頃の季節だと、深夜の釣りに分があるような気がする。もう少し暖かくなってくると、夕マヅメから頻繁にアタリが来るようになる。釣れ始める頃はアタリも散発だけど、時間が経つにつれて入れ食いになるケースを何度も経験している。

 また、何故か潮止まりの時間帯に爆釣した事が多い。これはひょっとすると、その体型から流れのある時は捕食しにくいのかも。だから潮が止まった時間帯に、空腹を満たすため一気に捕食するんじゃないかって気がしている。真実は、未だにボクも分からない。

 お腹の中をチェックすると、小さな魚やエビなどが入っている。ちなみに船で釣れてくるドンコには、アミコマセがたっぷり入っている事も多いらしい。鍋物にしたくても、アミコマセの臭いでやめたという人の話も聞くほど。

 こんな彼らをキャッチするためにボクが選んだのは、極小のソフトルアータックルだ。ペニャペニャのロッドに小さなリール。ラインは3ポンドの直結だ。この先に、1gのショートスプリットリグをセッティングする。針は掛かりやすさを重視して、ヤマメ針の8号、ソフトルアーにはグラスミノーSSのグローを使う事が多い。

 この仕掛けを、夜の岸壁沿いに沈めて、少しずつ横移動しながら静かに探っていく。狙いはほとんどベタ底だ。活性が高いと、ミノーにまでアタックしてくる事もあるみたいだけど、通常はこの釣り方だけで対応している。

 海底まで沈めたら、ゆっくり底から10cmくらいを上下に誘う。普段はあまり上に上げすぎると、ソフトルアーには食ってこない。1gというスプリットショットは、一般的に軽すぎると言える。だけど、水深5mくらいまでだったら、慣れればそれほど苦じゃ無い。とにかく、軽いショットでもしっかり曲がってくれるロッド、そしてテンションが低くてもトラブルの起きにくいラインが釣果を左右する。

 ボクの場合、寒い冬でもトラブルのほとんど起きない、アイルトラウトの3ポンドを使っている。万一絡んだとしてもほどきやすいラインなので、ライン選びに迷っている方はお試しあれ。タレントのさとう珠緒ちゃんも誉めてくれた一品です。

 さて、底の方を探っていると、まるでザリガニが静かにエサをかじっているような生命反応がくる。またはククッと何かが触れたような感触がくる。これがドンコの最もオーソドックスなアタリだ。多くのアングラーは、最初はそれがアタリだとは気づかないようだ。あまりにもアタリが小さすぎて、たぶん感じ取れてないのかも。

 それを感じ取れるように、全神経を研ぎ澄ませてみよう。最初はソフトルアーの尻尾を咥えてじっとしてるだけなんだけど、そのうちククッと来る。その時にビシッとアワセちゃいけない。吸い込んで捕食するドンコは、ビシッとアワセたら口からすっぽ抜けちゃう。聞きアワセみたいな感じで、徐々に速度を上げながら、上にスッと抜き上げるようなアワセが理想的。これが出来ないと、渋い時のドンコを手中にする事はできない。慣れないと反射的にビシッとアワセちゃうんだけど、是非ともマスターしてみよう。

 引きの強い魚じゃないけど、フッキングまでを存分に楽しめるターゲットだ。ただ、操作が雑だと、意外と鋭い歯のためにラインブレイクする事も多いんだよ。ラインがザラついてきたら、こまめに結び直した方が良いね。硬いフロロラインをリーダーに使うと、動きが悪くなって釣りにくくなる。とにかく自然に動いている様を演出してみよう。

 ドンコは、鍋や味噌汁の具にすると美味しく食べられる。白身の魚なので、タラと同じような食味だ。魚屋さんでも高値で売ってるほど。機会があったら常磐・東北方面で、是非ともチャレンジしてみて。

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