このページは 週刊テレビから発刊されている Hello Fishing
2000/06/01号 に掲載された記事です

ノーシンカーワームでマルタと遊ぼう
 ゴカイがバチ抜けをするシーズンになると、港湾部では水面に多数のライズリングが現れる。このライズリングの主は、多くがシーバスのものだろう。でも、その中には他の魚が混じっている可能性もある。例えば、今回紹介するマルタ。この魚も似たような行動パターンを取る事があり、時としてシーバスと勘違いして夢中になる人も居る。

 でも、シーバスじゃなくたって、マルタはそれなりに面白いターゲットだ。シーバスを狙っていて釣れてくるとガックリする人も多いんだけど、専門に狙って釣ろうとしたら難しい。今回は、そんなマルタを繊細に楽しむテクニックを、皆さんに一挙公開してしまおう。

 フィールドとしては、バチ抜けの行なわれている場所なら可能性はある。特に排水口があり、何となく浮遊物が流れ出している場所なら更に良い。ボラが水面に頭を出して浮遊物を食べている場所だったら、そこから扇状に開いている流れの弱まるあたりだ。決して綺麗とは言えないけど、リリース前提で楽しむんだったら我慢かな。

 最も、シラスみたいに小さなベイトフィッシュが入ってくる場所だったら、もっと水が澄んでいる場所でも関係無く釣れる。まあ、マルタの釣れる実績場所であれば、魚影の確認が出来たらキャストだね。

 さて、このように小さなベイトフィッシュやゴカイを食べているマルタを釣るには、通常のミノーで狙ってもヒットはそれほど望めない。河川内ならミノーにもガンガン反応してくるんだけど、港湾部の止水に居付いてしまうと食性が変わるみたいなんだ。だからこそ、マッチ・ザ・ベイトの考え方が生きてくる。

 ここで言う、マッチするベイトとは、前記に紹介したゴカイであり、もしくはシラスのような小魚というわけ。だから、これをイミテートするためには、小さな小さなソフトルアーが手っ取り早いって事になるんだ。そこで登場するのが、エコギアのパワーシラスやグラスミノーSSなどだ。ネジワームという名前の物も、好んで使っているアングラーが多いようだ。

 さて、タイトルにもあるように、この小さなソフトルアーをノーシンカー、すなわちオモリやジグヘッドを使わないで釣る。ラインの先には細軸のフックが結んであり、そのフックに小さなソフトルアーをセットするだけの、とてもシンプルなリグなんだ。

 こんな軽いリグをキャストしようってんだから、使うロッドも超繊細なウルトラライトロッドじゃないと使い物にならない。たったそれだけの重さで、ロッドをしならせてキャストしなけりゃならないんだから大変だ。上手い具合に遠心力を利用してキャストしなきゃ。軽いからロッドの曲がりが少ないし、当然その反発も期待できないってわけ。

 ラインも細くして、出来る限りキャストでの飛距離を優先しよう。ボクは3ポンドを直結で使うけど、人によっては2ポンドで楽しんでいるようだ。まあボクの実感だと、3ポンド以下ではブレイクが心配になっちゃう。3ポンドでも心配な人は、先端に30cmほどのリーダーを八の字結びで付けておけば安心だ。

 無理しなければ、ラインの途中で切れる事は滅多に無く、魚体にラインが擦れて切れることが多い。歯の無い魚だから、吸い込ませたら手を止める程度で、唇にフッキングしてくれる。そんなイメージを頭に描いて、タックルの準備をしよう。

 それでは釣り方の説明だ。前記のように、排水口の流れが途切れるあたりに、小さなライズリングがあればチャンスはある。ひょっとしたらシーバスかも知れないけど、慣れてくれば見分けがつくようになる。このライズリングが一定に出ている場所を探しだそう。

 一定の時間の間隔で、同じ場所でライズリングが繰り返されている場合、そこにいるマルタは流れてくるエサを捕食する気持ちが強い。だから、ちょうどライズリングの出るタイミングに、ソフトルアーがその場所へ到達するようにしよう。そうする事によって、違和感を与えずにスッと捕食してくれるんだ。

 アタリの出方は2通りで、水面直下に定位している時と、ちょっと深い場所に定位している時に分けられる。水面直下にいる場合には、アタリらしいアタリにならない事が多いようだ。具体的に言うと、ゆっくり流れているラインが止まったり、一瞬だけラインが上流へ戻されるなどの微妙な反応だ。

 それに対して、ちょっと深い場所に定位していた場合には、アタリがハッキリでる事が多い。これは下から浮上して、咥えた直後に元の深さまで戻ろうとするからだ。ただ、極端に素早い動きではなく、ジワーッとラインが持ち込まれているような感じだ。初めての人は、気がついたら竿先がしなっていたなんて表現する人もいるほどだ。

 いずれのアタリの出方でも、自分がやる操作はただひとつ。ロッドを軽く立てながら、ラインの出を止めるだけ。アタリがあったからと言ってアワセちゃうと、すっぽ抜けてしまう。マルタ自身が動いた時に、ラインテンションを掛けておいてやる事で、口からハリが引きずり出されながら、唇でクルッと反転しながらフッキングするんだ。

 あとはヒットしてから直後の大暴れをこらえて、できるだけソフトにラインをいたわりながら寄せてくればいい。マルタはすぐにおとなしくなっちゃうから、最初だけうまく交わしてやれば大丈夫!

 最後は抜き上げなんて無理なんだから、優しく玉網ですくってあげよう。玉網はナイロン製の物が、魚の体を痛めにくいようだ。楽しませてくれたマルタのリリースには、十分に気を使ってあげよう。シーバスを丁寧に扱っている人でも、マルタやボラには脚で蹴っ飛ばす人も多いみたい。でもボク達を楽しませてくれる魚には、優しく接したい。

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