このページは 週刊テレビから発刊されている Hello Fishing
2000/06/29号 に掲載された記事です

ツノザメで体力トレーニングだ
 今回は、滅多にお目に掛かれないターゲットを紹介してみよう。だからと言って、あまりお薦めするような内容でもないんだけど、こんな釣りもあるんだなぁと言う受け止め方で読んで頂いても結構だ。

 これから夏にかけて、海は赤潮や潮ッカスによる濁りの日が続く事がある。極端に濁りが強くなると、これがまたアングラーにとって、面白い現象を引き合せてくれる。例えば普段から専門に狙わないと釣れないような、深い海で昼間は生活している魚が釣れたりなんかする。

 タチウオが水面近くで釣れたり、エチオピアが昼間っから100m程度で釣れる事もある。スミヤキ(クロシビカマス)まで浮上してきて、エサ釣りのハリスを噛み切っていく事だってあるんだ。このように、思いもかけない事が起きるのも、海の面白さと言えるかもしれない。

 さて、数年前から面白がって釣っているのは、実はサメなんだ。ツノザメ(ツノメ)って呼ばれてるんだけど、これが100mの海底で意外なほど簡単に釣れる。ジギングで釣るんだけど、重々しいファイトは大物釣りのトレーニングにもなる。

 事の発端は、濁りが入ったらメダイがエサ釣りで釣れ始めたと言う情報からだった。様々なリグを準備して仲間たちと望んだんだけど、一向にメダイのヒットは無い。そんな時にヒットしたのが、今回話題にしているツノザメってわけ。

 このサメは、聞くところによると冷水性のサメで、この時期に潮が濁ると集まってきて、エサ釣りの仕掛けに掛かってくる事がしばしばだと漁師さんから聞かされた。釣り客を乗せる船頭さんの間でも、邪魔だから何とかしたいという話し。でも、そんな魚だって、いるなら釣ってみたくなっちゃうのがアングラーとしての性。メダイが釣れないついでに試してみようという事になった。

 ポイントは水深が100mほどで、その周辺がなだらかに落ち込んでいる。その部分だけが山のように盛り上がった海底だ。メダイも多いそうだけど、このカケ上がりに沿って、ツノザメがたくさん居付いているという。

 PE2号に80ポンドのショックリーダー。150gのメタリックサーディンを結び、アイの上にはケミホタルを取り付けた。歯によるブレイクを防ぐため、ケミホタルはチューブでかぶせる方式を取った。

 ロッドはシイラ用のボートロッドを使ったのだけど、激しいシャクリは必要無いようで、ヘビーなタックルはいらない。魚探の反応は、底から3~5mの範囲に出ていて、ここだけを集中的に狙えば良い。夜間浅場(100mくらい)に出ているバラムツを狙うときと同じで、シャクリ上げてくる必要は無い。同じレンジで、ロッドを上下に動かして誘うだけで良いから、釣りその物も楽だね。

 基本的には底で釣る魚だから、その水深から掛かったツノザメを巻き上げてくるのは結構大変だ。なんせ100mもファイトする魚を巻き上げてくるのだから。しかもアベレージサイズは1mくらい。慣れないと結構疲れるかもしれない。

 後日談として、普段ブラックバスを追っている若手のバスプロ達が、この釣りにはまってしまったという話しも付け加えておこう。意外なほど簡単に釣れるし、魚を掛けるまでのハードさも無い。しかも昼間釣れるという事が、彼らを楽しくさせてしまったのだろう。雨の中まで釣りに出かけたメンバーもいたほど。

 タックルと釣り方の紹介は簡単に済ませたけど、だいたい分かってくれたかな。是非釣りに行った方がいいよ…なんて言わないし、専門に釣らせてくれる船宿があるわけでもない。しかも、いつでも釣れるって事でもないから、チャンスがあったときに、偶然沖にいたら試してみたら?って程度で覚えておいてね。

 ちなみに、これをやらせてくれた事のあるのは、真鶴半島・福浦港のまるせ丸と、小田原・早川港の亀蔵丸だけだ。他の船宿は、やらせてって頼んでも嫌がるだろうなぁ。だって、ルアーのフックを外すのが大変だもん。

 そうそう、ここが肝心だから、忘れないうちに書いておこう。何が大変かって言うと、やっぱりフックを外す時だね。まがりなりにもサメはサメ。その歯の鋭さは侮れない。こやつを相手にするためには、それなりの気構えと準備がいる。まあ、基本的に慣れないアングラーは触らない方がいいね。

 以前試し釣りをした時から、まるせ丸でやっている方法を紹介しておこう。それは柄の長いギャフと、柄の長いエイリアンペンチだ。当然船内にサメを上げるのは、船長に嫌がられるよ。縁起が悪いと嫌われているから。だから、船べりで外す作業が当たり前になる。

 水面まで上げてきたら、そのまま口にギャフを打って、その状態でエイリアンペンチを使い、力ずくで外す。こんな方法で試している。この方法は、深場のジギングをやっている人にとって参考になるから、準備しておいた方が良いかもね。

 まあ、シングルフックでバーブレスにしておけば、大きめのフックで対応できる方法もある。これは漁師さんに教えてもらったんだけど、直接シングルフックのフトコロの部分にギャフを引っ掛けて、そのまま逆さにひっくり返すんだって。そうする事によって、苦も無くフックを外せるらしい。

 この方法は安全だし、魚を痛めることも無いらしい。まあそうは言うものの、漁師さんからは邪魔者扱いされる魚なので、釣れたら殺せなどど言われている魚でもある。エサ釣りに混じって釣れたときは、ほぼ殺されているらしい。

 生き物を粗末にしていると言われるかもしれないが、やっぱりエサ釣りで掛かってきたらショックなんだろうなぁ。まあ、もしこれから先に釣る、もしくは釣れちゃったなんて事があったら、今回の話しを思い出してみてよ。

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