このページは 週刊テレビから発刊されている Hello Fishing
2000/11/16号 に掲載された記事です

チカメキントキって知ってる?
 チカメキントキって、みんなは知ってるかな。写真を見て欲しいんだけど、なかなか派手な格好をしているよね。エサ釣りのゲストとして釣れてくることはあるけど、これを専門に狙っている船宿は珍しいと思うんだよね。

 今回は、このチカメキントキを、メタルジグを使ったルアーフィッシングで釣っちゃおう。ボクが専門に狙うのは、真鶴半島の西側付け根にある、福浦港のまるせ丸だ。この連載にも何度か話題が出ているんだけど、本当にこのあたりは色々な魚が釣れて嬉しい。

 さて、事の発端はイナダのジギングなどで釣れてくるところから始まった。もちろんタイのビシ釣りでも混じって釣れてくるんだけど、まさかイナダやカンパチを狙っているジギングにビシバシと釣れてくるなんて思いもよらなかった。それほどまでに、数多く混じってくる年もあったんだ。

 魚探の反応をちゃんと見れば、もちろんイナダとの違いは歴然だ。ビッシリと魚探の画面が赤くなり、ジグを沈めて誘い上げてくると、ワラワラと反応が上ずり始めてくる。このような反応の変化さえあれば、その日の釣果は約束されたようなものだ。あとはいかにして、チカメキントキの硬い口へフッキングさせるかにかかっている。

 写真を見ても分かるように、当然ながらイナダと同じハイスピードのジギングをやっていたって、ヒット率はかなり低い。チカメキントキなりの、誘いと食わせのテクニックが必要なのだ。

 魚のイメージは、みんなの頭に思い浮かんできたかな。派手で平たい魚で、表面はヨロイのように硬いウロコと皮で覆われている。口の回りは硬いし、そして小さい。あっ、言い忘れたけど、通常の明るい時間帯では、かなり狙うタナが深い。ここでは70mほどを狙うことはザラにある。だからそれなりの心構えが必要なんだ。

 具体的に何が重要かと言うと、小さい口が相手なので、それなりにボディボリュームの小さめなジグが有利な感じは否めない。だから大きくても30gがいいところだ。40gのジグだと、よほどこじんまりとした形状でないと難しい。

 それでもこの水深を確実に狙うとなったら、かなり繊細なタックルが必要になる。ロッドはバスタックルやトラウトタックルで良いし、ベイトでもスピニングでも問題無い。だけど重要なのは、そのタナまでストレス無く沈めて、なおかつ確実に操作をジグへ伝えられるだけの感度の良いラインが必要だ。

 ボクが絶対に使って欲しいとお願いしたいのは、PEラインの5ポンドだ。細いと感じるだろうけど、10ポンドでは絶対に得られない有利さを持っている。この繊細さは他の釣りにも使えるから、これを機会に是非使ってみて欲しい。

 狙う水深が深いから、最低でも100mリールに巻こう。先端に結ぶショックリーダーは、フロロカーボンの3号を使いたい。ここで絶対に忘れないで欲しいのは、ナイロンを使わないってこと。ナイロンのリーダーを使ったら、たぶんすぐに切れちゃうよ。

 意味は分かるよね。最初に説明したけど、チカメキントキのウロコって、かなり硬くてザラザラしているんだ。だからリーダー部分がすぐにザラザラになっちゃう。現実にはフロロカーボンを使っても、表面はかなり傷つくのが早い。

 これが原因のラインブレイクを防ぐには、やっぱりこまめにリーダーを結び直すしかない。ラインシステムをいつも組み直していると時間がもったいないから、ちょっと長めにリーダーを付けておくのが利口なやり方だね。時々キズチェックして、ザラザラしてきたら面倒がらずにこまめにジグを結びなおそう。

 タックル面でのアドバイスは、大体これくらいかな。あとはイカにして食わせるかだ。エサ釣りだと群れに当たればあっさり釣れてくれるんだけど、これがルアーとなるとそうはいかない。コマセ無しで、チカメキントキの捕食に対する活性を高めてやらなければならない。そのためには、流れるようなアクションの付け方が重要なんだ。

 チカメキントキのタナまで沈めたら、とにかく小刻みにジャークさせてみよう。間違ってもこのジャークでフッキングまでに持ちこもうと思ってはダメだ。あくまでもここでのアクションは、ジグへ目を向けさせるためのものだ。

 そして少しずつタナを上げさせてみよう。魚探の反応が、誘い上げてくるジグにくっついて浮上してくればしめたものだ。チカメキントキがジグに興味を示してくれた証拠なんだ。こうなってくれたら、あとの勝負は早い。

 チャッチャッチャッと小刻みに誘い上げてきたら、水平姿勢になる程度に一瞬のフォールをさせる。この一瞬が食わせの間と考えよう。そしてその一瞬の小さなアタリを感じ取り、鋭く一気にアワセてやる。

 甘い針先は通用しない。だから硬い口で甘くなった針先は、どんどん研ぐか交換するか自分で判断して、常にベストの状態でチャレンジしよう。この小さな努力こそが、こういった魚に出会える確率を高めてくれるんだ。

 さ〜て、運良くというか上手くフッキングさせてきたら、ヒットの瞬間の抵抗にビックリするよ。だけどひるんでラインを弛ませたらダメだよ。とにかくどんどんリールを巻いちゃおう。ちゃんとフッキングしていれば、ばらすことは滅多に無いはずだ。中途半端なアワセをやらない限り、ちゃんと上まで上がってきてくれる。

 無事にキャッチしたら、あとはからだのザラザラを自分の手で感じ取ってみよう。きっとこれがチカメキントキかぁ…って、感激の涙(ちょっと大袈裟か!)が出てくるかもしれないよ。

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