●1999/05 清水港のメバル●

 外は寒くこんな冬の寒空に、何で釣りをしなけりゃいけないのかなんて思ったことないかな。ボクもあまり寒いのは好きじゃないけど、それも釣りに出掛けるまでの話しだけなんだ。重い腰を持ち上げてフィールドへ出掛けちゃえば、いつの間にか寒さなんて・・・忘れられないんだけど、ついつい夢中になって釣りをしちゃうよね。
 連載2回目の今回は、寒い冬の夜でも楽しめちゃう、メバルをテーマに追ってみた。メバルは、春告魚とも呼ばれているんだけど、2月に入れば各地で釣果が聞かれるようになってくる。ナギの日がよく釣れるので、敢えて寒い夜風の吹きすさぶ日に出掛けることはない。

 伊豆半島では30cm級の大型メバルが釣れ始め、ポツポツとラン&ガンで拾い釣りをするのに良い季節になってきた。でも、のんびり一カ所に陣取って、小型で楽しむのも良いんじゃないかなって事で、まずはボクが試したことのない場所で釣ってみることにした。
 いつものようにインターネットとE-mailを駆使して、各地からの情報収集を開始した。実は今回の取材では内房から南房総なども釣り歩いてみたんだけど、何となくそこらで紹介されている場所よりは違うところが良いだろうと言うことで、まったく逆方向の静岡県に目を向けてみることにした。

 今回の情報主は敢えて伏せて欲しいと言うことで、情報だけをいただいての単独釣行となったんだ。全開の田子の浦港より更に遠くの、清水港がこの日のフィールドだ。清水というと、清水の次郎長やお茶どころで有名な場所だ。ここ数年はJリーグ人気などで、街の至る所にサッカーの雰囲気が感じられる。港の岸壁にまで、サッカーボールをあしらった飾りがあるほどなんだ。
 情報主の話によると、元々は日の出埠頭周辺でのカサゴが面白くなってきたとのこと。しかし、メバルもやってる人はほとんどいないが、狙えばちゃんと型を見ることはできるそうだ。たしかに「清水港でメバルを釣ろう!」なんて記事は、ボク自身見たことも聞いたこともない。

 何となく案内のいない状況に不安ながらも、東名高速をひた走り清水インターを降りた。愛車のサーフに付けたDVDボイスナビゲーションの案内音声を聞きながら、娘のはるかを連れてのドライブとしゃれ込んでみた。予定より早く清水港へ到着し、明るいうちにポイントのチェックを開始!

 日の出埠頭自体は、何のヘンテツもない岸壁で、港口側はかなり水深がある。ところが、内側へ入り込んだ船を係留してある場所の水深は、信じられないほど浅い。深い港内の中でも、ちょうどこの近辺は一気にカケ上がって浅くなっているから、魚たちの補充には十分と言うイメージを受けた。
 さて、ボクが目を付けた場所は港内の一番奥だ。横の方には派出所があり、道路脇には大きなビルがたくさん立ち並んでいる。なんとなく都会のど真ん中で釣りをしているような錯覚に陥る。しかも、桟橋には時折通勤?らしき水上バスが出入りしている。船が到着するたびに、スーツ姿のサラリーマンたちが降りてくる。しかも、ロッドを持っているボクを不思議そうに見て。

 明るいうちに見た限りでは、決してメバルがいないはずがない。運良く潮が澄んでいたので、ボトムの様子は手に取るように分かった。埠頭周辺は泥底っぽかったけど、奥のこの場所だけは、根というか岩がごろごろしている。手前が浅いけど、1〜2mも離れた場所のブレイクラインから先は、かなり急激なドロップオフのようだ。
 辺りが薄暗くなり始め、イルミネーションが町を美しく照らし始めると、気分も高まって清水港のメバルに早くお目に掛かりたくなった。陰になっている部分を探し、沖にブレイクのあるヘチを丁寧に探ってみることにした。
 そしたら、やっぱりいるいる。清水港のメバルなんて、正直言って狙って釣れるシチュエーションだなんて思ってなかっただけに、ボクにとってはちょっとばかりショッキングな出来事だった。

 小さいのから中くらいまで、単発だけど追ってくる。まだ周囲が明るいからなのか、追ってきてもボクと目が合うと戻って行っちゃう。その中でも一番ひょうきんなメバルに狙いを定めた。足元にジッとしてるんだけど、目の前をワームが通過する度に上を向いて追ってくる。上まで来ると、フッと頭を持ち上げるようにしてこっちを見ている。
 何度か繰り返しても反応は変わらず、このメバルを絶対に釣ろうとポイントをしばらく休ませることにした。他の場所で清水港のメバルを適当に楽しんで、30分後くらいに再び様子を見に行ってみた。ヘチを覗き込むと、やっぱりそこにジッとしている。辺りは完全に暗くなり、おそらくこれがラストチャンスだ。

 今度はボクは隠れたままで、メバルには姿を見せないようにして挑戦してみた。ヘチに沿って軽くキャストし、そのメバルがいるレンジを引いてくる。目の前と思われる場所でスッとロッドをリフトさせると、案の定一発でフッキングした。
 小さなメバルだって、1尾づつを楽しみながら釣るのはどんなターゲットでも同じだ。数釣りに走りがちなメバルだけど、みんなも魚との対話を楽しみながら釣ってみたらどうかな。ついでに話しておくと、ボクが帰る頃にはセイゴのボイルが凄かったことも付け加えておこう。


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