今の人は誰?。。。


 それは、久々に東京湾へ向かう途中の出来事です。早朝4時の出船ということで、家を出たのが夜中の2時。自宅を出発して、そのままいつものルートで国道へ向かう。途中でコンビニに寄ってオニギリを買い込み、再び車を走らせる。

 すぐに小田急線の踏切にさしかかり、停止線で一時停止した。夜中とは言え、一応左右確認をして車を前へ進めようとしたその時。目の前の線路上に、黒っぽい人影が見えた。

「いつの間に人が来たんだろう?」

 この時はあまり気にせずにそう思った。ただ、何となく違和感があり、車をスタートさせることができなかった。その違和感とは、ハッキリとした人に見えなかったから・・・。たしかに人の姿をしているんだけど、正確には人のような姿をした黒い影と言った方が正しいかもしれない。

 その黒い影は、マジシャンが被っているようなシルクハットを頭に乗せているようにも見えた。影はスゥ〜ッと向こうへ動き出した。踏切を渡り、15mほど行ったあたりで左側の歩道に上った。次の一瞬、自分の目を疑った。そう、目の前からその影が突然姿を消したのである。近くに隠れる場所なんて無い。

 驚いてしばらくジッとしていると、対向車線からタクシーのライトが近づいてきて、フッと我れにかえった。時間にしてどれくらいだったんだろう。周りを見渡してみても、先ほどの影はどこにも見えない。車を再び走らせて、その場を立ち去った。時間は午前2時。丑三つ時だ。

 恐ろしくなって、現地で待ち合わせる予定の仲間へ携帯で伝えようとしたのだが、何故か圏外の表示になってしまい使えない。この時間帯が使えなくなっているなんて、後で念のため調べたけどどこにも載ってない。当然いつも快調に使える、電波には全く問題の無いエリア内だ。しかも、不思議なことにFMを聞いていたラジオからは、ピ〜、ピ〜という不思議な音が鳴り響いている。

 訳が分からないままに車を走らせて、20分ほど経過してから携帯電話を見ると、圏外の表示は消えている。そこで慌てて電話をしてみる。その話を彼に伝え始めると、今度は会話が向こうに聞こえてないようだ。こっちに相手の声は聞こえているのだけど、向こうへは伝わってないようだ。そのうち、再びラジオの変な音が強く鳴り始めた。そして電話は切れた。

 更に10分ほど過ぎ、今度は相手から電話が掛かってきて、ようやく普通に話すことができた。ラジオはいつの間にか、普通通りの放送に戻っていた。全て、あの黒い影が起こした不可思議な現象だったのであろうか・・・。


お帰りは こちら ですよぉ〜