犬の散歩。。。


 それは伊豆半島へ出かけたときのできごと。ここしばらく続いている強風で、海はかなり悪い状況だ。それでもキャストできる場所を探しながら、無事に取材釣行は終了した。堤防から車の方へ戻りながら歩いていると、スロープの方に犬を散歩させている人の姿が見えた。こんな強風の中釣りをしているこっちもそうだけど、犬の散歩をこんな日にしなくてもいいのに・・・と思った。途中の通路はスロープだけに常夜灯があり、そこだけは姿が見えた。しかしそれ以外の場所は真っ暗闇で、崖の横を通るときなどは、ライトを持ってなければ足元すら見えないほどの状況だ。

 とりあえず車に荷物を積み込んで、そのスロープの方向へと車を走らせた。そして真っ暗な崖の横を通過するときに、右側を犬を連れた老人?と思われる姿が視界に入った。犬の種類まではハッキリと確認できなかったけど、その人は顔をマフラーか何かでぐるぐる巻きにして、しかも帽子を深く被っている。こっちを気にする様子もなく、そのまま少しだけうつむき加減で歩いていた。結局その人の姿はよく分からなかったが、そのままこっちも素通りした。

 途中でちょっと気になって振り返ってみたけれど、姿は分からなかった。暗いから分からなかったのだろう・・・と、そのときは思っていた。そしてせっかくなので対岸のポイントをチェックするつもりで、車を岸壁に停車させた。その間も時々先ほどの場所の様子を気にしていたけど、その人は暗闇の位置から出てくる気配はない。あのペースで歩いていれば、とっくに明るい場所まで出てきてもいい頃なのに。まさかあの真っ暗闇で犬と一緒にジッとしているなんて考えられない。もちろん横にそれる道はないし、まるでその暗闇から消えてしまったようだ。

 あまりにも気になるのでちょっと戻ってみようかとも考えたが、なんか怖くなってきたのでその場を早々に立ち去ることにした。車に乗り込み、ドアをロックして(何となくロックした方がいいような気がした・・・)、周囲の様子を気にしながら車を走らせた。広い道路に出てもう安心と思っていたら、道路の左側に大きく動く影が見えた。一瞬の出来事で目を疑ったが、ブレーキを踏んでバックギヤへ素早く入れた。その場所まで一気にバックして、その横で車を止めた。するとノソノソと動き出して、脇の山の斜面へと逃げていった・・・特大サイズのイノシシが!


お帰りは こちら ですよぉ〜