動いた。。。


 久しぶりに南伊豆回りで帰ろうと、海岸線の様子をチェックしながら東伊豆方面へと車を走らせていた。西伊豆から南伊豆にかけてメバルを楽しんだ後の帰り道だ。いつもなら西伊豆から修善寺に抜けるんだけど、この日は何となく東伊豆経由で帰りたくなったのが理由だ。もちろん気になる釣果情報が、東伊豆にあったからにほかならない。

 車は空いている道路を順調に走り続け、街中が近づいてきた時だった。時間は夜中の1時くらい。目の前では道路工事がやられていた。いつもならのんびりと信号が変わるのを待つんだろうけど、この日はちょっと気分が違っていた。その停止位置のちょっと手前には、右に鋭角に折れていく海岸へと続く道があった。これが迂回路にも使えるから、せかっくなので久々にここの下にある堤防の様子でも見てこようと思った。この安易な選択が、これから先に起きる怖いことを引き寄せていたとは・・・。

 目的の場所へはすぐに到着だ。車を路肩に停めて、ロッドを持ち堤防へと向かった。月は出ておらず、わずかに星明りだけで堤防の先端へ向かう。下った道を一歩ずつ確かめながら、平らな場所へ出ると今度は岩肌を回り込む。何となく先が見えない場所というのは、ちょっとばかり不気味なものだ。水深の浅い場所なので、音を立てないよう静かに近づいていく。堤防は左側が波除のため高くなっていて、その上には木のようなものが4本ほど乗っていた。暗くてよく分からなかったので、その時は気にもとめなかった。

 堤防先端に立ってルアーのキャストを開始すると、眼下には無数の夜光虫がキレイに光っていた。すると自分の顔の左上にあった木のようなものが、突然グワッと下に下がってきた。ドキッとしながら、思わず体を右側へかわす。幅の狭い堤防なので、すぐに右側は海が待っている。これ以上は避けられない位置まで体をかわすと、「あれぇ〜、こんな所で釣りする人なんかいるんだぁ〜。」という若い女性の声。目をこらしてよ〜く見ると、うつぶせで堤防の上に横になっていた2人の女性が、顔だけを持ち上げてこちらを見ている。

 まさかこんな真夜中に、若い女性が真っ暗な堤防に寝っ転がっていようとは夢にも思わなかったので、本当にそれこそ心臓が止まりそうな思いをした。彼女達も突然自分達の足元に人がいたからビックリしたようだったけど、二度と経験したくないほどの怖さだった。ちなみに彼女達は、堤防の上から顔を出して海を覗き込み、キレイに光る夜光虫を眺めていたようだ。近くにペンションがあり、どうやらそこから歩いて夜中の散歩に来ていたのだろう。


お帰りは こちら ですよぉ〜