キャンプ場に手が。。。


 それはボクがまだ高校生だった頃のお話です。夏休みの或る日、釣り部の合宿で箱根の芦ノ湖へ出かけたときの事です。湖尻にあるキャンプ場に到着し、まずはテントを所定の場所にはりました。芦ノ湖は夏頃からワカサギがたくさん釣れる湖で、夕食用のオカズを調達するために、ボートで出船しました。予定通りメンバーが食べるには十分な量のワカサギを持ちかえり、満足のいく釣りができたのです。みんなも喜んで、初めてのワカサギ釣りを堪能していました。

 辺りが暗くなり、夕食を作ってみんなで食べ、バカ騒ぎをしながら夜はふけていきました。気がつくと時間は夜中の2時。なかなか寝る気にもなれず、仲間と3人で湖畔へ散歩へ行こうという話になりました。ボクが先頭になって、キャンプ場に木々の間を抜けて、湖畔脇のボサの入口へさしかかった時です。少し離れた先の方で、白っぽいものが右から左へと動いていくのが見えました。

「こんな時間に人がいるねぇ」
「ホントだ。何やってるんだろう?」
「密漁だったりして。夜はバスが釣りやすいからね」
「ちょっと見に行ってみようぜ!」

 立ち止まっていたボク達は再び歩き出し、その白いものが通り過ぎていった湖畔へと到着しました。そのとき、3人はえもいわれぬような恐怖を感じたのです。その人?が動いていった場所は、なんと湖の上だったのです。当然夜中にボートが出ているはずもないし、立って歩きながら移動するように見えたのです。既にその姿は消え、ボクたちは顔を見合わせて慌ててテントの方向へと走り出したのです。

 ・・・と振り返ったその時。目の前に真っ白な手が・・・。
「ウワァー!」
「ギャァー!」
「デタァー!」

 一瞬、われを忘れて叫び声をあげたボク達は、目の前に突然現れた白い手に驚き、動けずに体が硬直してしまいました。逃げようにも唯一のルートにはその手が・・・。ところが、落ち着いてその白い手をよく見ると、それは木の枝に挿してあるただの白いゴム手袋だったのです。心臓が止まりそうなほど驚いたボクたちは、ようやく落ち着きを取り戻すことができました。

「な〜んだぁ〜、手袋だったのかぁ〜」
「脅かすなよなぁ、まったくぅ〜!」
「きっと誰かのいたずらだろうね。あぁ〜、怖かった(^^;;;」

 我に返って、ようやくテントへ向かってボク達は歩き始めたのです。しかし、誰ともなく出た一言で・・・、
「そう言えば、さっきの白いのは何だったんだろう?」
「そうだね。湖の上を人が歩けるはずないもんなぁ・・・」
「やっぱり・・・」
「うわぁ〜!!!」

 3人は全速力でテントへ走り戻ったことは言うまでもありません。テントへ戻っても怖さが消えず、なかなか寝付くことができませんでした。しかし、いつの間にか眠ってしまい、気がつくと辺りは明るくなっていました。今日は朝から別の仲間とも会う約束です。暗い時間に到着して、ボート屋さんの駐車場で仮眠しているとの話を聞いていました。昨晩の話を彼にすると・・・。

「えっ? やっぱり夕べは出たのかなぁ??」
「えっ? 何かあったの?」
「実は運転席のシートを倒して寝ていたんだけど、何となく目をあけた時、バックミラーに女性が映ったんだよ。右後輪の横でしゃがみこんでいたから、おかしいな?と思ってシートを起こして窓越しに振り向いたら誰もいないんだよ。気のせいかな?と思ってもう一度バックミラーを見たら、やっぱり居るんだよなぁ・・・」
「それって、ひょっとして・・・出たの?」
「怖かったから、そのまま無理やり目をつぶって寝てたよ(^^;;;」

 その後、芦ノ湖でこのような体験はありません。しかし、霧が出ると某所で女性の鳴き声が聞こえてくるとか、各地にあるような怖い話を噂で聞くことは随分とありました。こういったモノって見える人と見えない人がいるって言うけど、少なくともこの時には、居合わせたみんなが目撃したというのが怖いですね。今度はあなたが体験する番かも知れませんねぇ・・・。


お帰りは こちら ですよぉ〜