姿の見えない足音。。。



 久々の夜釣りのため、夕方から沼津方面へと車を走らせた。しかし沼津周辺はタチウオが接岸しているらしく、どこもたくさんのアングラーで溢れかえっていた。そこで仕方なく、いつものように伊豆半島へ向けて大移動することにした。途中の漁港を数ヶ所チェックしながら、目的の漁港で存分にアジ釣りを楽しんだ。あとは朝からメッキを狙うために、どこかで仮眠していればいい。しかし時間はまだ日付が変わった頃だ。長い夜を寝て過ごすのは、せっかく釣り場へ来ているのにもったいない。そこで他の漁港の状況チェックも兼ねて、再び釣りを再開した。

 場所はいつの間にか南伊豆。そういえば以前の釣行では、この港でイヤ〜な電気ウキの明かりに脅かされた。今日はひとりではないので、そう何度もおかしなことは起きないだろう・・・、このときはそう思っていた。車を停めた場所から少しずつ探りながら移動していく。港内にはミナミハタンポが群れていて、係留船の間を狙っているとヒットしてくる。探りながら徐々に港口方向へと移動していくと、この日も気になる電気ウキの明かりが海面に漂っていた。しかし対岸の堤防上を見ると、アングラーが月明かりに照らされている。ときおり仕掛けを上げ下げしているので、今回は大丈夫・・・のはずだった。

 安心してこちらの堤防先端へ歩いていこうとすると、突然イヤ〜な感じがした。一気に鳥肌がたって、寒気が始まった。しかし対岸やウキの明かりに異常はない。すると堤防先端方向からサンダルで歩く音が聞こえてきた。「ペタッ、ペタッ・・・」という音が徐々に近づいてくる。足音はひとりのようだけど、すぐに会話する声が聞こえてきた。斜め左上は堤防の護岸の上で、人は十分に歩けるだけの幅がある。しかしそちらを見ても人の姿はない。もちろん目の前の堤防先端にも、まったく人はいなかった。月明かりがあるので、堤防の上はハッキリと見えている。その歩く音は徐々に近づいてきて、言葉は聞き取れないけど人の話す声は続いている。

 後ろをそっと見るとみんなにも聞こえているらしく、3人で立ち止まってしまった。動けない・・・。「聞こえるよね?サンダルで歩いている音が・・・」「やばいよ、戻ろう!」そんな内容の会話を交わして、3人で小走りに堤防を戻り始めた。先ほど釣りをしていた辺りまで戻ると、急に鳥肌が消えた。寒気もなくなって、足音や会話も聞こえてこない。「ひょっとしてヤバイ時間じゃない?」とひとりが口にした。携帯を取り出して時間を見ると、深夜の2:07だった。いわゆる丑三つ時という時間で、慌ててみんなは車へと乗り込んだ。やっぱりこの漁港には、夜の釣りをしにきてはいけないと、このときに改めて感じさせられた。この場所で、いったい何があったのだろう・・・。


お帰りは こちら ですよぉ〜