影・・・ライト・・・そして・・・。。。



 久々に通った釣り場への道。今日も真っ暗で、沖に見える釣り船の明かりが目立っている。だけど道路は街灯もなくて真っ暗で、月明かりだけが薄ぼんやりと周囲を照らしている。いつもとは違うエリアを釣り歩こうと、今日はいつもと違うコースで海岸沿いの道路を気持ちよく車を走らせていた。しかし心地いいドライブは、これから起きる恐ろしいできごとで消え去ることを、このときはまだ思ってもいなかった。

 漁港の明かりが途切れて、徐々に山あいの暗い道へと車は進んでいった。ところがしばらく行くと、いきなり左半身に寒気を感じ始めた。そして左腕から顔面にかけて、いっきに鳥肌が・・・。毎度のことながら、この寒気と鳥肌が何かを予知してくれる・・・。あまり嬉しくないような、ちょっとだけ助かっているようなきもするのだが・・・。

 いくつかコーナーを抜けると、その寒気はさらに強くなった。そして視界の左端には、花束が置かれていた。われながら恐ろしくなってしまう一瞬だ。いつもならこれを通り過ぎると、徐々に鳥肌はおさまっていく。今日もそうなるだろうと思っていた。ところがこの日は違った。いっこうに鳥肌と寒気はおさまらず、それどころかさらに強くなっていく。

 ちょっとばかりイヤ〜な予感がよぎる。左の急なカーブを曲がっていくと、いきなり目の前に黒い影が現れた。そしてそれは人の形のように見えて視界に飛び込んできた。「ヤバイッ!」と思いながらも、車をアウト側へ逃がしながらクリアする。しかし黒い影は目の前に迫ってくる。思わず「ワァッ!」と声を出してしまった。するとその影は、スッと左コーナーの内側へと消えていった。

 何だか分からないまま、ドキドキしながら真っ暗な道を逃げるように、ペースを上げて走り去ろうとした。車の通りもない真っ暗な道が、その気持ち悪さを助長している。かなりのハイペースで車を走らせていると、後方から物凄いスピードで迫ってくるライトが見えた。ここはかなり狭い山道で、左右にくねったワインディングだ。ところがそのライトはずっと見えたままで、カーブを走っているような感じがしない。

 何だかいやな予感がしてきたので、さらにペースを上げて逃げるように走る。ところがいつの間にかそのライトはすぐ後ろにまで迫っている。ピッタリと後ろについてあおるようにしてくるのだが、すぐに道とは思えない右側を、ものすごいスピードで追い抜いていった。そして一瞬にしてその姿が見えなくなってしまった。まさかハリーポッターに出てくるナイトバス・・・。まるでチョロQのような動きと、「まさか?!」と思うような抜き去り方、できの悪い特撮シーンを見ているような、とてもこの世のものとは思えない動きをしていた。常識的には考えられない、そんな動きとスピード、抜き方をしていったのだ。

 抜かれてからすぐに見えなく・・・、いや、消えるように見えなくなってしまったのだ。どんなことをしても、あんな速さは考えられない。寒気、鳥肌、そして黒い影、逃げなきゃと思わせるような嫌な感覚、そして迫りくるライトと抜き去っていった車。一連のこのできごとが、わずかな間に起こっていった。山道を抜けて次の街明かりが見え始めた頃、ようやくそれまでの鳥肌や寒気が消え去っていた。この道はしばらく通れない・・・、そう思わせるに十分すぎるほどのできごとであった。


お帰りは こちら ですよぉ〜