1996.12.10号
 
キントキが釣れるから土産はバッチリだよ


 今回はちょっと面白い変わったターゲットの話しをしようと思う。みんなはキントキって知ってるかな。ここらで釣れてくるのはチカメキントキってヤツが多いんだけど、これが面白いようにルアーで釣れるんだよ。

 事の起こりは先日福浦港のまるせ丸にイナダをジギングで狙いに行った時の事だ。最近真鶴半島のアッチとコッチでイナダのジギングもルアーに対する反応が違う事が自分なりにかなり分かってきた。小田原側に比べると狙っている水深もかなり深く、60〜70mを狙うことが多くなってきている。
 ところが、小田原側では同じ時期に攻めているのは水深30〜50mと浅めだ。ちょっと前だったら福浦側のタナを狙うのは難しかっただろうけど、最近ではルアーの世界でもPEラインが主流になりつつある。特にバーチカルジギングではこれがないと全く釣りにならないと思えるような状況さえ有り得るのではと感じさせられる時さえあるんだ。
 どっちが簡単とか難しいとかあまり言いたくないけど、実際に浅いほうが釣りやすいだろうし、手軽さを求めているルアーマンには馴染みやすいかもしれない。

 ボクとしてはシーズン後半になってもいまだにルアーの乗り合い船を出している福浦のまるせ丸が気になっていて、最近特に高橋千春船長と船上でルアー談義をするチャンスが多くなってきた。そんな訳でこの日もイナダとカマスを求めてのチャレンジとなったという事なんだ。
 おっと、そうだ。ここ福浦港では小田原側とは違って午前船、午後船と2回に別けて出船している。どちらも同じようにターゲットたちのヒットチャンスはたくさんある。しかも、この午前と午後に別れている事のメリットは他にもある。早朝または夕方にカマスがルアーで楽しめるんだ。

 オフショアのカマスについては以前フジテレビの『快楽釣美人』でも紹介されたから知ってると思うけど、この時期になってからは当然の事ながらカマスのサイズも大きくなって、30cm級も混じるようになってきた。ところが、このカマスってヤツは潮が濁ったりすると反応が極端に悪くなることが多い。
 こんな時でも御土産を釣らせようとしてくれるのがまるせ丸のいい所なんだ。冒頭でも触れたように、なんとチカメキントキがマヅメ時に釣れることがある。しかもカマスとは反対に潮濁りや天気が悪い時などはマヅメ時でなくても釣れてくることがある。
『野地さ〜ん、今日はカマスの道具を持ってきたってやらないヨ〜。でもその代わりにキントキが釣れるから土産はバッチリだよ』
『エッ、キントキは最近外房で狙っている船があるみたいだけど、この辺りでもルアーで釣れるの?』
『結構簡単に釣れるよ。ボトムまで沈めたらフォールの最中に下の方で勝手にヒットしちゃうくらいだから』

 この千春船長の心強い言葉でイナダのジギングにも力が入り、当然の事ながらバッチリの釣果。そして午後の3時頃の事…。
『アッ、違うのが落とし込みで喰っちゃったよ。随分時間が早いなァ』
『ひょっとしてキントキ? 釣れるのは暗くなる直前だったんじゃないの?』
『天気が悪いからこんな早くから食ってきたのかもしれないね。昼間は定置網の下に隠れていて、暗くなるとフラフラ出てくるみたいなんだ。ホラ、やっぱりキントキだ』
 あがってきたのは紛れもなくキントキだった。ド派手な体色が印象的な魚だ。
『よしっ、イナダはもういいや。もう釣れてくるならキントキ狙いに変更するよ』
 千春船長の真似をしてジグをボトム付近でしゃくってフリーフォールさせると、フォール中にコツコツという小さな手ごたえの後にラインが止まった。ラインスラッグをとってからアワセてやるとグッと踏ん張るいい手ごたえだ。きっと派手な体でヒレを大きく広げながらカッコ良く上がってくるんだろうなぁと想像しながらリーリング開始。
『千春さん、ほんとに簡単なんだね。釣れたよ、キントキだぁ』
『フォールで喰わせる釣りだから小刻みにバイブレーションしながら沈むジグの方がヒット率はいいみたいだね。それから口が極端に硬いからフックしっかり研いでおいた方がいいみたいだよ』

 その後も順調に釣れ続いて妙に嬉しくなってしまったキントキのジギングだったのであります…という事で、夢中になったボクはカメラを持っていたにもかかわらず写真を撮らなかったんだ。結局陸に上がってからストロボ撮影で魚だけ写したんだけど…。
 キントキは群れでガンガン移動する魚だからいつでも釣れるとは限らないけど、みんなも福浦のまるせ丸に乗るときは状況を聞いてみるといいかもしれないネ。