1997.5月号
 
「嵐を呼びつける男」のような人がいるんじゃないかと?


 いや〜、やっと釣りができましたよ。なんてったってア〜イド〜ル…じゃなくて、なんてったって久しぶりに週末釣りができたって感じですよ。このところ週末になると天気が悪くて、風が強いとか雨が降っているとか、とんでもない気象状況の日が続いていたんですよね。
 何だかボクの周りに「嵐を呼ぶ男」以上の強者、「嵐を呼びつける男」のような人がいるんじゃないかと最近真剣に思うようになってしまいました。だってボクがひとりで抜け駆けして釣りに行ってる日はホントにいい天気なんだよね。
 もっともボクが思っているいい天気は、必ずしも快晴の穏やかな日じゃないけどね。でも今日だけはちょっとばかりこのいい天気がとっても素晴らしい日になってくれたことに感謝せざるを得ないんだ。

 明日を岩丸3号のルアー試し釣りに控えた3月末のある日の出来事。なんとなく週末の悪い天気にアキアキしていたこの日は、久しぶりにボクが釣りをするための日と言ってもいいくらいの気がしていたんだ。
 実は某ルアー専門誌からの依頼というか、命令とも言うべき指令がボクに出されていたんだ。一部の人は知っていたと思うけど、インターネットのホームページで紹介していた岩港サーフ周辺のヒラメ…、と言ってもソゲサイズが釣れていたんだよ。
 このソゲは2月からずっと釣れ続いていたんだけど、他の取材予定とかに追われていてなかなか自分自身で釣りに行かれなかったんだ。でも何とか時間を作ってチャレンジはしていたんだけど、前記のごとくサンデーアングラーたちをいじめているとしか思えない天気に悩まされていたというわけ。
 ようするに、せっかくボクたちが釣りに行ける日に岩港へ行ったとしても、最悪の状況が続いていたので釣りができなかったと言うことなんだ。「ライトタックルで静かなサーフのソゲを春先に楽しもう」計画は、もろくも崩れさっていた。

 3月の中旬にはほとんど反応がなくなっているという情報がとっても悲しかった。しかし、3月末になって福浦港まるせ丸の高橋千春船長から「難しいけどまだ釣る人は釣っているみたいだよ」という嬉しい情報が飛び込んできた。こうなったら行くっきゃない。
 なんとカメラマンがいなかったので、船宿の船長に仕事をさぼらせて、「明日の朝の6時に岩港で待っているからカメラマンやってよ」というとんでもない言葉が口から出てしまったんだ。でも千春船長は嫌な顔ひとつせずに(電話で話してたんだから嫌な顔なんて見えるわけないよね)協力してくれることになった。感謝、感謝!

 久しぶりにベタナギの海が目の前に広がった時はホントに嬉しかったよ。波はチャパチャパしてるだけだから、あとはソゲの活性だけだ。最初は実績があるという河口部で、これまた実績のあるというエコギアのダウンショットリグをキャストしてスローのズル引きで試してみた。
 この日のために情報を収集してくれていた千春船長から、リトリーブが速すぎると追い切れてないからバラシが多いらしいという話を聞き、僅かな距離をウダウダさせながらジックリ誘ってみた。しかしソゲからの反応が全くない。
 ベイトフィッシュが極端に小さいからミノーはダメかもしれないとう情報でソフトルアーをセレクトしたのだが、極端にスレているんだかいないんだか良く分からない。

 暫くキャストを繰り返したが全く反応がない…ナイ…全くないよ〜。これじゃあ某誌のページが落ちてしまうと気が気ではない。なんたって取材に強いことで通っているから絶対に釣らなきゃならない。プレッシャーは相当なモノだった。
 結局家にチェストハイウエーダーを取りに戻って再チャレンジだ。千春船長からのアドバイスで、小型のソゲはこんな状況下では根に付くという。そこで岩場の近くまでウエーディングしてマイクロミノーで直撃してやろうという考えだっったんだ。
 しかもミノーではバイトはあるけどバラシが多いという情報もあったので、ミノーをアピールさせた後にステイ(いわゆる一瞬のポーズですね)させることでバイトを誘発させる試みだ。

 結果はアッという間にソゲが3枚。欲を出して岩場で狙ったムラソイも3尾という結果を引き出す事ができた。千春船長の漁師の経験と、ボクのルアーマンとしての経験から出せた立派な答えだったと思う。
 当日までの情報収集の大切さと、いかにしてその情報から魚のヒット条件を導き出すかとういう、考えて釣る事の必要性を再認識させられたとっても実りある春の1日であった事は言うまでもない。