1997.10月号
 
オフショアのライトタックルルアーが流行らないわけがない!


 本誌読者の皆さん、こんにちは。いや、これを読んでいる時はひょっとしたらこんばんはかな?
 このホットラインの連載を始めてからもう随分長いのだが、連載の最初にソルトルアーのライトタックルについて少々書いたのを読者の皆さんは覚えているだろうか。エッ、そんな昔はこの雑誌を見てなかったから知らないって?
 まあそれならそれでもいいや。今回はその頃の状況から現在に至るまで、この間のライトタックルゲームの移り変わりと、今後の将来性に付いて思うことを書き綴ってみたいと思う。今まではただ単に陸っぱりのルアーなら流行るんだなんて言われていたが、そこが今になってどのように変わってきたのかを読者の皆さんにも知ってもらいたい。

 さて、ところで本誌読者の中で、ルアーを経験したことのある人は何人ぐらいいるのだろうか。ボクが思うに最近はほとんど船のエサ釣りの雑誌になりきっているような気がするのだが。
 ここでボクがライトタックルの将来性について言葉を発したところでどうなるかは分からないが、今回はちょっとしゃべらせていただきたい。ソルトのライトタックルルアーをやっている読者がほとんどだと言う前提で話してみたいと思う。
 まずはその実状だ。もう何年も前になる話しなのだが、某誌でライトタックルばかりを専門に連載記事を書いていた頃だ。その当時はソルトルアーと言えば大物思考が強く、ショアのルアーならシーバス、オフショアのルアーならシイラというのが当たり前のようになっていた。

 当時は誰もボクがやっていたようなライトタックルの記事を連載するなんて、どこの出版社もやっていなかったのだ。担当の編集者でさえそんなチマチマした釣りが流行るワケないと言っていたほどなんだから。
 これだけ聞いてどう思いますか。今はソルトルアーって陸っぱりのライトタックルルアーがメチャクチャに流行ってますよね。何でだと思いますか。やっぱり手軽さに他ならないですよね。
 だってわずらわしい船の予約はしなくていいし、行きたいときに出掛けて、イヤになったらやめて帰ってくればいいんだから。こんな手軽で気分屋さんにでも気楽に遊べるルアーフィッシングって他にないもんね。
 当時は全くライトタックルを、どこの雑誌もやっていなかったんじゃない。やれなかったんだと思う。だって大物思考の時代に小物を釣って記事にしたってインパクト弱いもんね。誰だってそう思うよ。

 ところが現実にはそうじゃなかった。思ったほど当時釣れてる人が少なかったソルトルアーは、もっともっと釣れるルアーフィッシングを実は求めていたんだ。ボクの記事を見て、実際に陸っぱりのルアーに通い、現実に手軽に魚がそこそこのヒットを得ることが出来ていた。
 いくらルアーはキャッチ&リリースだとか、どうせリリースするんだからひとつでも釣れればいいやなんて思っていても、所詮は釣りは釣れてナンボの世界だったって言うことなんだよね。
 確かにシーバスやシイラは今でも人気の的だけど、実際には手軽にメッキやカサゴを釣っていた方が現実にマッチしていたと言うことなんだね。首都圏に住んでいる人にとってそれが東京湾のシーバスだったり、場合によってはメバルだったりする。

 また、自然のシチュエーションに恵まれた地域に住んでいる人たちは伊豆半島などへこまめに通い、メッキやアオリイカなどで楽しんでいた。シチュエーションやそれぞれの住んでいる環境によって専門に狙うターゲットこそ違ったが、基本的にはいつでも手軽に多くの回数を通いやすいターゲットに置き換わって来たような気がする。
 こんな事をボクが言ったら読者の皆さんに叱られるかもしれないが、どちらかと言えばボクは自然のたくさんあるシチュエーションの中での釣りが好きだ。もっともっと日本の自然の可能性を見つけにフィールドへ出てきて欲しい。

 今、関東のフィールドは陸っぱりのルアーマンにとって、ひとつの転換期に来ているのではないかと思う。そう思っているのはボクだけじゃないと思う。何故かって、それは世間で騒ぐほど陸っぱりで魚が釣れていないからなんだ。
 ライトタックルが流行りだした当初は、ルアーの人口って言うのはピラミッド型をしているのかと思っていた。すなわち底辺が広がっていて、徐々に上級者へ行くに従って人数が少なくなってきている。
 ところが今は違う。底辺は今まで以上に大きく広がってきているんだ。これはブラックバス人気で急速に増大したフレッシュウォーターのルアーマンが、これまたなかなか釣れないブラックバスからソルトのルアーへと転向してきたからだ。

 釣りの世界へのめり込んだ人は、なかなかここからは抜け出せない。それどころかどんどん深みへとはまりこんでいく。船のエサ釣りへ転向した人も多いし、そのままソルトルアーを始めた人も多い。
 もう分かっただろう。フィールドでたくさんのルアーマンを収容できなくなってきたんだ。人が多いから当然人的プレッシャーも高くなり、キープや粗雑な魚の扱いも多くなったために現実問題として魚も減ってきているだろう。
 広大なルアーフィールドとして有名な沼津の片浜海岸もそうだ。あれだけ広くて収容能力のある海岸でさえ、夏の回遊魚のシーズンには暗いウチから場所取り合戦が繰り広げられているのだから。
 手軽なソルトの陸っぱりライトタックルルアーが流行ったのは、ボクとしても非常に嬉しい。だって自分が絶対に流行するって信じて続けてきたことなんだから。

 しかし、こうなってきた責任はボクたちライターみんなにあると思う。陸っぱりのルアーが釣れない印象が徐々に流れ始めているんだ。もちろんルアー人口を減らすなんて方向は考えたくない。ではどうすればいいのだろう。ボクとしてはこれからのライトタックルの2つの方向性を提案していきたい。
 ひとつは簡単なこと。もっと外道と言われているターゲットたちを大切にすること。メッキを釣りに行って何にも釣れなかった時、アナハゼと遊んでくる人も多いと思うが、どうも外道としてバカにしがちだ。
 外道は所詮本命になり得ないと言い切る人もいるが、それはそのルアーマン個人がそれぞれの感性と価値観で決める事だ。多くのライターの宣伝で、このようなターゲットたちも市民権を得てきたような気がする。しかしまだまだ事態は深刻とボクは感じている。

 もうひとつの意見、それはもっとオフショアにも目を向けていこうと言う意見だ。はっきり言ってオフショアのルアーは釣れる。状況によってはエサ釣りよりも釣れるんだ。
 関東では福浦港のまるせ丸がその先陣をきって、陸っぱりで楽しめるライトタックルそのままで出来ることを開拓してきている。既にオフショアのライトタックルルアーはまるせ丸を中心に動き出しているんだ。
 1年を通してルアーだけで船宿商売が出来るほどにまでなっている。雑誌や新聞の取材が関東で最も多いルアー船の船宿だろう。手軽なタックルで確実にお土産が釣れるというのが人気の秘密かも知れない。
 夏の回遊魚をキャスティングで狙う時も人数を6人と限定し、安全に広々と釣れるようにルアーマンの気持ちを分かってくれている船長だ。20人も30人も乗れるだけ乗せる船宿とは違う。本当の意味でルアーマンのためを思っているのだ。

 これだけ真剣な船宿が出現し、1年中ルアーで何らかを釣らせてくれているのだから、オフショアのライトタックルルアーが流行らないわけがない。
 幸か不幸かその常連さんは若手のバスプロが多い。テクニック抜群だから、海の魚の生態とヒットさせてからのあしらいさえ覚えてしまったら、現状のソルトルアーマンは太刀打ちできなくなってしまうだろう。
 もう現実の転換期はそこまで迫ってきているんだ。もっと楽しくたくさん魚をヒットさせたいと思っているルアーマンは多いはずだと思う。
 徐々にではあるが、メディアの世界もその方向で動きつつある。乗合船、仕立船、プレジャーボート、カートップボート、手漕ぎボートと可能性はたくさんある。
 考えられる手段がこれだけあり、既にレールの上を走り始めているんだ。なかなか陸っぱりのルアーは釣れないと嘆いているルアーマンが多いと聞く今日この頃、そんな人たちにもっともっと楽しんでもらいたくて、今回はこんな記事を書かせていただいた。

 現状のボクが考える方法としては、このオフショアに目を向けて、より多くのジャンルを広く楽しむ事に他ならない。多くの経験はもちろん自分に返ってくる。オフショアである程度完成されたタックルとテクニックを覚えれば、ショアに出掛けた時のテクニックやアイデア的な面までも有利にゲームを組み立てる事が出来る。
 最後にもう1度言いたい。魚釣りは釣れてナンボなんだ。もっとがむしゃらになって様々な研究をしてみて欲しい。どうせ釣りを楽しむなら、もっと釣るための研究と労力を惜しまないくらいのめり込む人が増える事を願ってやまない。これをボクの連載のまとめとさせていただきます。