●1996/07 大洗港のクロソイ●

 今回から堤防オンリーの釣行記を連載することになった。でも難しいんだなァ、これが…。てな訳で、あんまりいい話ばかりしても面白くないんで、ちょっと古いけどこの冬の苦労話しをしてみようと思う。
 平日に釣行できればまだまだチャンスはた〜くさんあると思うんだけど、2月の関東は悲しいかな強烈な冷え込みに包まれてしまった。ポカポカ陽気は平日だけで、週末に期待していると強烈な冷え込みだの大雪だのって悲しいことばかり。たまには茨城にターゲットを追い求めようと考えたのが不幸の始まりだったのだ。ボクが最初に選んだのは何となく、ナントナク、なんとな〜く釣れそうな気がした日立港と隣接した久慈港だ。

 今回地元に近い常陸太田に住んでいる渡辺さんと、水戸のクロちゃんこと黒沢さんに案内をしていただいた。渡辺さんは茨城のフレッシュウォーターポイントをかなり熟知しているのだが、ソルトウォーターのルアーは初めてとのこと。オマケ?のクロちゃんは全くの釣り初心者。まずは久慈港の目の前にデ〜ンと構える釣具店に立ち寄って情報収集を開始した。
 お店の中に入ってビックリしたのだが、ボクたちの相手をしてくれたのはナント若いオネーサンだ。随分慣れているようで、ポイントの説明を淡々としてくれる。しかし、時既に遅しといった感じでアイナメは渡りの時期も終わってしまっているらしい。1月だったらまだ良かったようなのだが…。

 そこで困った時の神頼み?ソイたちの状況を聞いてみたんだけど、
『ソイ?ソイだったら釣れるでしょう。でも水温が低いからネェ』
『でも釣れる時はかなり釣れるんでしょ。この辺りではソイを狙っている話をあまり聞かないけど…』
『まあ、頑張ってみてヨ!』
 何だか釣れるんだか釣れないんだか分からないまま、取り敢えず実績があるという久慈港の岸壁へ行ってみた。
 気温はマイナス7℃で水温も7℃…かなり冷え込んでいる…なんてもんじゃあないよネ。
 隣の日立港に移動したりして夜中の12時頃まで頑張ったんだけど、
『手軽なライトタックルでナンデこんなに苦労しなけりゃいけないんだヨォ〜。寒いヨォ〜』
 しかし、懲りない面々は全く懲りてないようで、次の週には気分を変えて舞台を大洗港に変えていた。
 港の中央に位置する中堤防と呼ばれている場所だが、情報によると既に終盤を迎えてしまったようで期待は薄いとのこと。
『水温次第だネ…』

 期待出来るんだか出来ないんだかよく分からない状況のようだ。でも目の前にはエサ釣り師を始めとするアングラーがたくさんいるではないか。しかし、車のナンバーを見ると地元の車は全くおらず、都内のナンバーだらけだ。不安…。結局気温がグングン下がり出し、魚からの返事はとうとう帰ってこなかった。

 ちなみに今回の釣行記を何とかいいモノにしようと思って週末の夕マヅメを南伊豆の下田でキメテやろうと出かけた。タックルセットしたところで携帯電話が鳴った。K哲編集長からの原稿催促だ。
『今どこにいるの?』
『下田の犬走だヨ。アナハゼでも釣ろうと思ってネ』
『早く釣れヨ!』
 ところが天は無情だった。電話を切った直後に突然の土砂降りだ。いくらボクが好きモノでもこの雨では参ってしまう。小雨になってから狙ってみたコウイカも数日前から全く釣れなくなってしまったらしい。
 そして、寒気に包まれた関東地方は大雪にみまわれたり、海外で起きた地震の影響で津波の危険があるから海に近付くなとか、散々な日々が続いたのであった。

 しかし、その日はやってきてくれた。後日大洗港に再チャレンジしたら、やっとお魚さんがボクに微笑んでくれたんだ。
 水戸では梅祭りが始まって早い場所では桜もチラホラ咲き始めているというのに、前夜の雪で大洗港は非常に寒い。またまた実績一番の中堤防に行ってみたが、そこにはルアーマンどころかエサ釣師の姿さえも見えない。取り敢えずひと通りのポイントを細かくチェックしてみたものの、やっぱり魚からの反応は返ってこなかった。

 気分転換のため、パールホワイトのチューブを4gのジグヘッドにセットし、ボトム付近をスローリトリーブしてみることにした。
 ソイを意識して軽いアクションをつけているとかすかにアタリを感じた。ひょっとしたらシーバスのアタリ?と思ってノーアクションでさらにリトリーブを遅くしてみた(このノーアクションがミソなのだ)。
 すると、着底直後のリトリーブでコンという小気味良いアタリが来て見事にフッキング。満月とはお世辞にも言えないが、ちょっとだけロッドをしならせてくれて上がってきたのはやっぱりシーバスだった。
 ちっちゃくて可愛いたった25cmのベビーサイズだったけど、久し振りの対面で初めてルアーで魚をヒットさせた時のような新鮮さを味わうことができた。

 茨城方面も暖かい春になり、稚アユも那珂川などの河川を遡り始めている。遡上前の河口周辺の港内にはベイトフィッシュも多く、シーバスに限らずこれからのホットなシーズンを期待させてくれる。ボクの気分もやっとのことで春になることができたのでした…。


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