●1997/05 久料のイイダコ●

 とうとうこの堤防釣行記の連載も今回でちょうど1年になった。最初は寒い時期だったためかとっても辛かったけど、やっぱり今回もこの時期に悩まされる結果になってしまった。
 普段ならまだまだ何とかなる陽気だったんだけど、この日ばかりはどうしようもなかった。だって、立ってられないくらいの超強風だったんだよ。

 いくら物好きなボクだって、あんなに風が強くっちゃやってられないよ。忙しい合間を縫っての堤防釣行はナンテ辛いんだろうね。
 結局堤防釣行記だけじゃあ1年は思うように出来ないのかなぁ、なんて考えたくなってしまう。実際にはいい状況の日に釣行できればどうって事ないんだけど、なかなか思った日にでかけられないもんなんだ。
 何はともあれ、やっとこれで1年経ったんでひと安心といったところかな。さあ、最後はやっぱり伊豆半島の釣行記で締めよう!

 という訳で、今回は短い時間を伊豆半島に賭けてみることにした。取りあえず前日はオフショアのホウボウをたっぷり釣ったので、大満足のニコニコ状態で自宅を出発できた。
 ところが…、ところがですよ、前記のようにとっても風が強いんですよ。もちろん家を出発した早朝はまだそんなじゃなかったんだけど、朝の暗いうちから吹いている風って一日中吹き続ける事が多いよね。みんなもそんな経験ってあるでしょ。

 この日も例に漏れず、海岸線を走るボクの目に飛び込んでくるのは風で滅茶苦茶に荒れた西湘の海だ。それでも自分自身を騙し騙ししながら真鶴半島を越え、伊豆山にさしかかった。近場でホウボウを狙っていた福浦港のまるせ丸が強風でたまらず引き返していくのが見えた。

 道路を走るボクの車と、海の上のまるせ丸がすれ違うときになんとも言えないイヤ〜な予感がした。
「やっぱりひどい風なんだよね。こんなに強い風で釣りをしようなんてのが間違いなのかなぁ」
 まるせ丸の携帯を鳴らして様子を聞こうとしたけど、残念ながら電波が悪いらしくてつながらない。
「とりあえず南伊豆まで行って見よう。たぶんダメだと思うけど…」
 下田の外浦や稲生沢川、何カ所かをチェックして回ったけど、予想通り風裏になるような場所は東伊豆にも南伊豆にも無い。ここは何とか西伊豆に期待してみるしかない。

 ところが、西伊豆に回ってみるとかえって西の強風が強くなってきてしまった。唯一の可能性がある田子湾は何とか風裏になっているが、いかんせん魚の姿が見えない。
「や〜めた。沼津に戻ろう」
「こんなのやってられないよ」
 そんな訳で今回はオ・シ・マ・イ…にしたかったんだけど、そこはやっぱりK哲編集長思いのボクとしてはもうひと頑張りしたい。西伊豆のワインディングロードを快調にドライビングしながらそんな事を考えていた。

 車が沼津の久料にさしかかった所で何となく寄り道したくなった。そういえば最近インターネットの釣り情報に参加してくれている近藤さんの事を思い出した。
「たしか近藤さんの情報で夜はカサゴが随分釣れているみたいだったけど、イイダコも混じっているようだなぁ。イイダコだったら昼間でも十分釣れるよね。この風でもここなら何とかなりそうだし…」
 日頃の行いがいいのか、神様はボクを見捨てなかった。風も徐々に弱まってきて、一番のイイダコのポイントには誰もいない。絶対に釣れると信じていつものイイダコリグをキャストすることにした。

 魚磯丸の横は一見岩礁帯のようだけど、よ〜く見ると所々に小さな砂地が点在しているのが分かる。このほんの僅かな砂地がイイダコたちのたまり場になっているんだ。
 ロッドはデュエルのトラウト&スピン。ボクのライトタックル愛用ロッドだ。最近このロッドのお世話になることが多く、先日はでっかいマゴチも船で釣る事ができた。今ボクが最も信頼のおけるロッドだ。

 ラインはなるべくボトムをじっくりと横引きしたかったので、敢えてフューズライン・フロロを使ってみた。フロロラインはPEラインと同様に伸びが少なく、イイダコの小さなノリも感じとりやすい。PEよりも比重が大きい分だけボトムをキッチリと探ることが出来るんだ。
 先端には自信たっぷりのイイダコリグだ。以前紹介したこともあるので知っている方も多いと思うけど、ホワイトの2インチグラブをジグヘッドリグで使い、フックの更に後ろ側へアユ用の3本イカリをつけておく。なかなかフッキングさせにくいイイダコには必殺のリグなんだ。

 まずは一番右側のちょっと広めの砂地にタコリグをキャストした。ところが2回、3回と探ってみても反応が無い。
 場所を少し移動して、一番左側の砂地へキャストしてみた。するとようやくここでイイダコ独特のノリが来た。なんとも言えない感激にかられながらも、ジックリとイイダコが確実に乗るのを待つ時間の長いこと長いこと…。
 時間にしたらホンノ10秒くらいなんだろうけど、こんな時ってスッゴク時間が長く感じるんだよね。
 タイミングを見計いユックリ大きくアワセを入れるとクゥイ〜ン、クゥイ〜ンと紛れもないイイダコの引き。この時点でボクの堤防釣行記は一年の幕を閉じた。次回からは新たなライトタックルターゲットたちへの挑戦が待っているゾー! 


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