●1997/09 犬走堤防のカマス●

 いやぁ〜、今回も参っちゃいましたよ。同じ魚は釣らないでねって、最初からK哲編集長の指令が出てしまったものだから。
 周りではヒラメがどうだの、マゴチがワイワイとか言ってるけど、確かに今年も昨年紹介した日立港のマゴチは爆釣している。でもみんなが今注目しているマゴチやヒラメをここで紹介したって面白くない。

 やっぱりボクは他の人と違うことをやらないと、何かを期待しているボクのファンの皆さんに申し訳ないと思う。
 地元福浦港のヒラメなんて毎日3〜8kg級が釣れていたんだから。でもこういったニュースって、どこの雑誌でも情報をかぎつけてきて紹介するんだよね。同じ事やったってつまらないでしょ。

 そこで今回は思いっきりずっこけたターゲット?で、この堤防釣行記にチャレンジすることにした。最もみんなが知っているターゲットなんだけどね。
 実を言うと、最初に考えていたのはクロムツのちっちゃいヤツなんだけど、サイズは10cm級だ。冬のナイトゲームで釣れる30cm近いヤツとは違って、ここまで小さいとなかなかヒットさせるのは難しい。

 ところが、毎年この時期には伊豆半島を中心にこの小さなクロムツの子供が大挙して漁港の中や磯に押し寄せて来るんだ。ボク自身も西伊豆で随分ミノーで釣ったんだけど、その時はこんなの記事にしないって断られていたんだ。
 今回は何故かいい返事をK哲編集長からもらえたんで、いよいよ真剣にチャレンジすることになった。ところが、皆さんもご承知の悪い潮の影響で、大切なマヅメ時は港の中の水がチョコレート色。

 最初の頃は漁港まで赤潮が入り込まず、夕マヅメに見物にいくとカブラの小さいので地元のアングラーが釣っていた。それが夢のまた夢になってしまったんだ。
 締め切りは近いし、どうしようかと悩んでいたところに朗報が飛び込んできた。その情報によるとどうやら南伊豆方面は徐々に潮が良くなってきたとの事だ。それなら当初予定していた福浦港を中止して、下田の犬走堤防にかけてみようと言うことになったんだ。

 そこで無理矢理犠牲者に大抜てきされたのが、福浦港のまるせ丸の船長だ。どうも最近は船長の仕事の他に、ボクの専属カメラマンにしてしまったような気がする。
 嫌がる?(本心は喜んでいたと思うんだけど…)高橋船長を助手席に乗せて、そのまま下田を目指したのであった。

 さて、夕マヅメに間に合うよう到着した犬走堤防は、何故か若いカップルが多かった。休日という事も手伝ったのか、みんなで仲良くトリック仕掛けでジンタを釣っている。
 取りあえず様子を見るために海を覗きながら、堤防の付け根から順番にチェックを始めた。しかし、クロムツらしい姿はほとんど見えず、たまに小さな群れが見えるがとても対象になるようなサイズではない。

 先端まで行ってみたが、結局クロムツらしい姿はあるものの、ルアーには全く反応してくれない。たった1時間ほどの釣りのためにここまで来たというのに。
 高橋船長は面白がってミノーでアナハゼを釣っている。ミノーでアナハゼを釣るのは初めてらしく、結構面白がっていた。釣れない時って釣れる魚がメインターゲットになり得るんだよね。

 しかし、ボクとしてはそうは言ってられない。高橋船長と一生懸命探すのだが、いっこうに群れが浮く気配はない。
 半ば諦めかけていた時に、堤防の際にキラリと光る何かが。とにかくルアーをキャストしてみた。最初は魚のサイズを意識してグラスミノーのSSだ。少し深い所を群れで泳いでいたので、ジグヘッドリグで攻めてみた。

 しかし、ルアーを何となく追ってくるのだが、いまいち反応が渋いようだ。横では高橋船長がノーシンカーで狙っている。ノーシンカーにはバスで思い入れがあるらしい。
 すると思いがけない出来事が起こったんだ。そのノーシンカーに群れが急浮上して強烈なチェイスが始まった。クロムツかと思っていたその魚はカマスだったんだ。

 すかさずボクもそのリグいただきで、SSをノーシンカーで使い、さらに活性を高めるために水面を小刻みにチョコマカ誘ってみた。ロッドの先端を震わせながらスローリトリーブだ。管理釣り場でよく使うテクニックだ。
 それが大アタリで、カマスの群れの活性はどんどん高まってくる。しかもカマスたちは水面をピョンピョンと跳ね回りながら、イルカショーのように僕たちの見る目をも楽しませてくれる。

 なかなかフッキングするようなサイズじゃない事は分かっている。しかし、たかだか10cm級のちびカマスたちがこれほどまでボクたちを楽しませてくれるとは思いもよらなかった。何しろ面白い。
 いつもならシンキングミノーをフォールさせたり、スプーンで誘い上げたりしているのだが、活性を高めて水面まで誘い出した方がかなり釣りやすい。ノーシンカーばんざ〜いってな感じだね。

 何とか2人ともそこそこの数をキャッチして、優しくリリースする事に成功した。もうクロムツなんてどうだってイイヤって気持ちになっていた。これだけ楽しめたから。
 よくメインターゲットはあくまでも最初に狙った本命の事だ…とか、そんな魚は最初からメインで狙うヤツはいないとか言う人も居る。でもボクはどんなターゲットでも、十分最初から狙ってのメインターゲットになり得ると思っている。
 それが本来の釣りの楽しみだと思うし、どんなターゲットだろうが、全てにおいてチャンスをモノにできるテクニックを持ち、そして知っていることがライトタックルルアーの神髄なんだと、つくづく再認識させられたちびカマス達だった。


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