●1997/11 江の浦港のシーバス●

 1年を通じてシーバスが姿を見せてくれる港が西湘にもある。ボク自身、あまりシーバスばかりで騒ぐのは好きでないので、釣れるのは知っていたけどあまり攻めてはいなかった。そんな時、クラブの仲間から今シーバスがいいみたいだよと言う情報が飛び込んできた。
 例年なら冬の2月頃にベストシーズンを迎え、40〜80cm級を中心にボクたちルアーマンを楽しませてくれるフィールドなんだ。だいたいアオリイカ狙いのアングラーが減り始めるその時期になると、アオリイカに追われるのとは違うベイトフィッシュの突き上げが見られる。

 この港のベイトフィッシュはそのほとんどがキビナゴだ。確かにアオリイカに突き上げられた時にもキビナゴは噴水上に弾け散るようなキビナゴ花火を見せてくれる。
 しかし、アオリイカが徐々に深みへ移動すると、キビナゴを突き上げる主はシーバスへと移行していくのだ。アオリイカと同じような状況にプラスして、直後にシーバスの姿が見えるようになると本格的なシーズンインなのである。
 ところがここ数年はこのような現象が1年中見られるようになってきた。何故そうなったのかは分からないが、ボクたちルアーマンにとっては嬉しいことだ。しかもあまり情報が流れてないので、地元の限られた人しかルアーをキャストしていないのもヒットさせやすい要因だ。

 さて、この西湘の江の浦港(おっと、まだ場所を紹介してなかったよね)は、このように意外と攻めるルアーマンの少ないシーバススポットである事を知ってもらえたかな。密かに攻めていた人たちゴメンね。
 と言うわけで、周りがあまりにも江の浦港の話題で盛り上がっていたので、たまにはシーバスでも釣って来ようかと出掛けてみることにしたのであった。
 もちろん状況を見て、この堤防釣行記の話題作りのためだ。
「へー、シーバスもやるんだぁ」なんて思った人もいるでしょ。たまにはシーバスも釣らないと、シーバスに忘れられちゃうからね。
 普段は他のターゲットやテクニック開拓で忙しいもんだから、どうしても条件さえ分かっていれば釣りやすいシーバスって後回しになっちゃうんですよ。了解してネ!

 世間をドキドキさせた大型の台風9号が上陸を控えた?夜、海は徐々にウネリを増してきた。夕方福浦港のまるせ丸の船長に海の様子を聞いたら、「朝に比べてだいぶウネリが大きいから、夜は難しいかも知れないねぇ」との情報を入手した。
 ボクにしてみれば願ってもない状況だ。過去にも台風が迫ってきて、気圧が徐々に下がるタイミングを見計らっての釣行ではいい思いばかりがある。

 この日も夜の9時半頃に、ちょうどボクがベストとしている潮の具合になっている。今日を逃すと何回もキャストしなけらならないなぁと思いながら、突然の釣行となった。
 小田原に住むボクにとって、江の浦港は完全に自分の庭と言える。自宅から車を走らせて、15分ほどで江の浦港に到着だ。
 今回準備したタックルは、本格的なシーバスロッドだ。おそらく台風によるウネリの影響で、ヒットさせたシーバスのランディングに苦労するかもしれないと想定してのタックルセレクトだ。
 特にこのような状況では信じられないような大物が港内に入り込んでいる事だってあり得るのだ。

 車を止めて港内を見回すと、思っていたよりも海は静かだ。コマセを使ってトリック仕掛けでアジを釣っている家族連れも楽しそうだ。しかしボクが探しているのは突き上げられているキビナゴの群れだ。
 ところが探してもほとんどキビナゴの群れが見あたらない。とにかく最初は様子を見ようと思い、ボクが絶対にココだと思える船揚場のスロープを攻めてみることにした。

 スロープと堤防のカドの部分は、潮がぶつかって、よたったベイトフィッシュがわずかに見えた。この状況ならコレしかないと思い、セレクトしたのはヨーヅリが誇るブッ飛びルアーのマグミノーだ。85mmのレッドヘッドをチョイスした。
 スロープから目の前のポイントを見据えてキャスト。ポイントの1mほど向こう側へマグミノーを着水させた。着水と同時にリーリングでスィッと一気に30cmほど潜らせて軽いトゥイッチ、そしてスローリーリングに切り替えた途端にゴンッと重々しいアタリが手元まで伝わってきた。

 ロッドを手前へ引き寄せるようにアワセを入れて、強引にスロープの際まで寄せてくると、そこにシーバスの姿が見えた。ところがウネリによる不規則な波で、引きずり上げるタイミングがうまくつかめない。
 仕方なく強引に寄せて引きずり上げてしまった。フックが外れる事も伸びる事もなく無事にランディング出来たので良かったが、普通なら絶対にやらない手段だ。
 メジャーで測ってみるとちょうど65cmのシーバスだ。ここで釣れるシーバスとしては大の小といったサイズだろう。まずまず満足できる。

 近くにいた家族連れが寄ってきてボクに声を掛けてきた。
「バカなスズキだねぇ、こんなルアーに騙されて」
「オジさん、そんなこと言っちゃダメだよ。ボクの方が頭良かったって言ってくれなきゃ」
「ハッハッハッ、ところで鍋に入れたらうまそうだなぁ」
 妙に楽しい家族連れだった。自分たちが釣ったアジはもう食べちゃったんだって。
 そんな話しをしていると海面が急に騒がしくなってきた。至る所でシーバスがキビナゴを突き上げ始めたのだ。しかもセイゴ級ばかり。ボクの釣ったシーバスが今日は一番大きかったのか、捕食の優先順位があったのかも知れない。

 今回釣ったシーバスは、久しぶりにキープしてお腹の中をチェックする事にした。お腹の中には6〜7cmのキビナゴが30尾ほどギッチリ詰まって入っていた。消化の具合から判断すると、夕方のマヅメ時にまとめて捕食したのであろう。
 さぁ、次は何を釣りに行こうかなぁ。そろそろアオリイカやメッキもボクを待っているはずだからね!


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