●1998/03 久慈漁港のクロソイとマゴチ●

 最近どうやら釣りの女神様が、寒い冬だと言うのにボクを温かく見守ってくれているようだ。ショアでもオフショアでも、釣りたいと思って出掛けたら、かなりの確率で取材が成功しているんだ。
 たしかに今までも本番には強かったけど、この数カ月間は自分でも信じられないほど好調な結果を保っている。釣りたいと思って絶対に写真を撮るんだって気持ちで臨むと、不思議なくらい、それこそアッと言う間に釣れちゃうんだ。
 前々号の取材で西湘の江の浦港のシーバスをワンキャストで釣った頃から、どうやらバイオリズムが頂点に達しているのかも知れない。このまま下降線をたどるなんて、全く考えることもない。

 色々と魚の写真が必要で、オフショアのライトタックルを連続して通い続け、その時もマダイ、イナダ、ホウボウ、アマダイ、カワハギ、ワニゴチと言った具合に、今日は何と何を釣るつもりだよって宣言してから釣り始めていた。
「誰か釣れたら写真を撮らせて。賞品にルアーを提供するよ」
 こんな感じでも結局はすぐに自分で釣っちゃうものだから、みんなからズルイと言われる始末だ。

 ショアでも江の浦港でアオリイカの写真を撮ろうと出掛けると、すぐに釣れてしまい、早い時間から2時間ほど粘っていた仲間に羨ましがられてしまった。
 今回はそんな状況に妙な自信を持って、わざわざ茨城の日立の海まで行って来ちゃいました。しかも狙いは夕マヅメから1時間ほどの短期決戦を目指して。

 サラリーマンが本職のボクにとって、何回も同じ取材を繰り返すほど時間的な余裕がないから、そういった面ではかなりハングリーに釣りをしているのかもしれないと、ボク自身最近思うようになった。
 日本のサッカーをワールドカップへと導いた岡田監督も、「今の日本にはタフさや精神的強さが不足している」といったハングリー革命を話している。
 実はボクも同じような気持ちで共感している。意外と釣りの世界だって、このようなハングリー精神が大切なんじゃないかって。
 おっといけない。随分と話しが脱線しちゃったけど、ようするに(魚に)勝つためには精神面でのタフさと釣ろうとするハングリーさがいい結果を導き出しているのかも知れない。今回もそんな気持ちで臨んでみたんだ。

 今回の茨城釣行にあたっての情報は、ボクたちのインターネットホームページに陸っぱり情報を提供してくれている、日立のやまがた釣具店さんの情報だ。このところクロソイがかなりの確率でヒットしているとのこと。
 もうひとつは、インターネットを通じて知り合った「マッチョ」さんが、ナイトゲームに湘南の河川内でマゴチが釣れているという情報を入手してくれたからだ。
 本来はこの「マッチョ」さんの情報で、他にもいいポイントがあるんじゃないかって考えていたんだ。マゴチって言ったら普通は照りゴチとも呼ばれるほど夏のターゲットってイメージがあるよね。
 でもこの情報を見たときに、ひょっとしたら冬でも夜だったらかなりの高確率で釣れるんじゃないかなって。日立周辺には水量の豊富な河川も多く、まして相模湾よりも港内の水深もあって残っている可能性が高いかも知れないって。

 そこにタイミング良く、やまがた釣具店さんの情報が飛び込んできたというわけ。これは一石二鳥に取材ができるかも知れないぞってね。以前からの情報を考えて、11月のある日を狙って挑戦してみたんだ。
 夕方の4時頃に日立港第五埠頭の茂宮川河口に着き、辺りが薄暗くなるのを待った。ポイントには投げ釣りでイシモチか何かを狙っている人がひとりだけ。

 様子を見ながら国道のちょっと下流側にある、小さな流れ込みへ行ってみた。何となくその時のボクの直感である。いつもはあまり攻めない場所だった。
 流芯付近には小さな根があり、下流側にタルミができている。そこを狙って2投目に小さなアタリ。簡単に寄ってきたのは小さな30cmほどのマゴチだった。まずは目的達成と言っていいだろう。

 ここで様子を報告がてら、やまがた釣具店さんへ挨拶に行こうと思って移動したら、何とお店が閉まっていた。仕方なくそのまま目の前の久慈漁港へ車を向けた。
 日立港でのクロソイ情報は貰っていたが、久慈漁港にはボクの大好きなクロソイのポイントがある。ここで2魚種目のクロソイをゲットしようという考えだ。

 先ほどマゴチを釣ったタックルのままでポイントを狙う。1投目、ボトムから10cmほど上をスローでトレースしてくると、小さな前アタリの後に引き込みが来た。
 グリップを手前へ引きつけるようにアワセ、なかなかのファイトの末に上がってきたのは30cmほどのクロソイだ。「おいおい、こんなにうまくいっちゃっていいのかよ!?」なんて頭の中ではニッコニコ!

 写真を撮ってから2投目。リトリーブ直後にちょっと違うモゾモゾ突っつきながら付いてくるようなアタリが来た。これはアワセたけどスッポ抜けてしまった。
 3投目にもまたもや同じようなアタリで、今度はリトリーブを止めてちょっとテンションを掛けながら待ってみた。すると案の定引き込みが来て一気にフッキングだ。
 たいしたファイトもなく抜き上げたのは、40cmほどのマゴチだ。やはり初夏のマゴチと比べると体はかなり痩せている。想像していたとおりだ。昼間は簡単には釣れないけど、夜の狙いとしては居着きのマゴチを狙って釣れる確信が持てた。

 もうとにかく嬉しくてこの日は終わり。なんだかこのままキャストを続ければどれだけ釣れるんだろうという期待と、もしこれ以上釣れなかったら運が去ってしまうかも知れないという気持ちが入り乱れた。
 さて、今回も何だか自慢だぞーって感じの内容になっちゃったけど、冬の間の日立周辺でのマゴチとクロソイの2本立ては、ルアーマンにとって凄く美味しい情報だと思う。さあ、どこまで釣れる!


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