●1998/07 石部のソゲ●

 皆さんは春のターゲットを思う存分楽しめましたか。ボクの場合、春と言えば伊豆半島、そう、春の陸っぱりルアーと言えば伊豆半島が大好きなんだ。 この堤防釣行記の連載も、いよいよ今回でオシマイ。そこで、やっぱり最後は大好きな西伊豆を攻めてみることにした。
 そして春の西伊豆で代表的なターゲットと言えば、静かなサーフのソゲ・・・と言いたいところだが、これは堤防釣行の連載なんだよね。だからサーフに突き出している堤防を、そのステージに選んでみた。

 随分前に本誌で西伊豆の仁科・大浜海岸でのソゲを紹介したのを覚えているかな。春先の西伊豆って、ワリと簡単お手軽にソゲと遊ぶことが出来るんだよね。
 もちろんソゲはあくまでもソゲだから、やっぱりリリース前提で遊んでもらいたい。でも時には立派なヒラメサイズがヒットすることもあるから、たかがソゲだからなんて甘く考えないでね。

 ところで何で西伊豆の春先は、ソゲが活発にルアーを追うか分かるかな。他のフィールドに較べると、何となくヒット率って高いような気がしているんだけど。
 これはあくまでもボクの想像なんだけど、西伊豆って冬から春先にかけては名物の西風で海が荒れるでしょ。とてもじゃないけど、そんなに荒れた海岸線で捕食するのはソゲにとっても大変なことでしょ。
 そう考えると、その荒れやすい海がおさまっている日が、ソゲにとっては待ちに待った捕食のための日なのかも知れない。滅多にない捕食しやすい日にエサを食べたいのは、ソゲの気持ちにならなくても何となく分かるような気がするよね。

 まあそんなこんなで今回のフィールドは、西伊豆の中でも南伊豆に近い石部を選んでみた。ここはそれほど西伊豆名物と言えるような荒れはないけど、小場所なのでアタリハズレはある。とは言っても、ソゲの魚影の濃さは侮れない。
 早朝は前号でも紹介した戸田港のカマスを楽しんで、軽くウォーミングアップを済ませてから石部へ向かった。石部へ着いた時間は満潮から下げに入った時間で、波打ち際での水位も申し分無い。下げていく最中に捕食が活発になるので、河口周辺に集まっているソゲを狙うことにしてみた。

 実はここへ来る前に、もう一カ所遊んできた。それは得意の仁科大浜海岸だ。でもサーフから釣っちゃったから、取りあえず報告まで。一応は堤防釣行記だからね。石部でもサーフに突き出した河口の堤防からのキャストだったけどね。
 最近のボクのライトタックルは、ほとんど1本の共通ロッドでやることが多くなってきた。ボクが気に入って最近いつも使っているのが、DUELのハイパーバスHB66SLというロッドだ。

 常々思っていたんだけど、手軽なライトタックルに最も適したロッドはあるけど、普通の人たちってそんなに何種類ものロッドって買い切れないでしょ。そこで暫くはボクも1種類のロッドで実際に通して使うことが出来るかを突き詰めてみたくなったんだ。
 ジャンル毎にベストのロッドが存在するのは当たり前の事だと思うけれど、全てにおいて満点のロッドって「帯に短きタスキに長し」だと思うんだよね。それだったらそれぞれにおいて100点満点のロッドよりも、そこそこにこれ1本でまかなえる合格点のロッドがいいのかなって思わない?
 それに限りなく近く思えるのが、現時点ではこのロッドなんだ。職業柄?色々なロッドを使うチャンスがあるけど、これはかなりいい線いっていると思う。

 余計な話しになっちゃったけど、これからはそんな一般的な人たちに対応しやすいロッドを作っていきたいと考えているんだ。
 例えば、「これから海のライトタックルルアーを始めたいけど、どんなロッドを買えばいいですか?」って聞かれたら、迷わず「これにしなさい!」って断言できるような、満点じゃないけど合格点を上げられるオールマイティロッドを開発していくのもボクの仕事かなって。

 さて、話しを元に戻そう。ラインはアイルSW・8ポンド、ルアーはアイルマグネット70Fコノシロをチョイスした。普段だったら目の前に稚アユの群れが見えたからアユカラーを使うんだけど、何故か気まぐれのコノシロカラーだ。
 河口の右側堤防の先端に立ち、誰もいないサーフのブレイクラインへ向かってキャストした。1投目は何事もなくリトリーブ終了。辺りは何となくモヤが掛かっていて幻想的な雰囲気さえある。沖へキャストするのは、何だか変な感じだ。

 真っ直ぐ流れ出しの沖へ向かってキャストし、一気にリトリーブで50cmほど潜行させる。ポーズをとった後に軽くトゥイッチを加えてからリトリーブに移った。その時何となく引き込まれるようなアタリがあったんだけど、ちょっと変な感触だったのでアワセないでリトリーブを続けた。
 すると朝モヤの中からルアーを追って現れたのは、大きな大きな海ボウズだった・・・な〜んてはずはなくって、1kg近い立派なアオリイカだった。こちらの存在に気がついたのか、スィーッと再び朝モヤの中へ消えていった。
 徐々にキャストの方向を右斜めに向けていく。45゜方向にキャストした数投目に、ゴンッといかにもソゲらしいアタリが来た。そのまま同じ速度でリトリーブを続けながら、ロッドへ更に重さが加わってから大きくアワセを入れた。

 石の上にも3年、いや、堤防の上にも3年と言われながら始めた連載釣行記であったが、この瞬間に幕は降りたのだった。皆さん、長々と読んで下さってありがとう。陸っぱりライトタックルって楽しいネ!


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