● 2002/07 群れを濃くしてから釣ろう ●

ここ数年で、アジと同じようにライトルアーゲームの地位を築いてきたムツは、専門に狙うとなかなか奥深くて楽しませてくれる。伊豆半島や外房では、釣果の実績も多く、大きいものでは30cm以上のサイズも釣れているのだ。

 冬から初夏にかけて、ムツっ子と呼ばれるサイズが、漁港などで手軽に釣れる。本来は深い海に棲息する魚だけど、小さいうちは浅場で過ごしているのだ。

 30cmくらいまでのムツは、夜になると浮上してきて、漁港の明かりなどを目指して集まってくる。プランクトンに集まるイワシなどを捕食するために、港入口周辺を中心に、活性高く活動している。

 エサ釣りでは胴付き仕掛けに切り身を付けて、港口の堤防から外海を狙う。サイズ的にはその方が大きいのだが、ルアーではそれほど遠くは探らない。匂いという集魚効果が期待できないので、回遊を狙うより、近くの群れを直接狙った方が、より効率的なのだ。

 そんな訳で、ルアーで狙う場合のメインポイントは、港口に近い、水深のある明かりの周辺などだ。外海に向けて開けている港であれば、港内の方でも釣れるケースはある。しかしそういったケースはマレで、釣れたとしても10cm程度の小型が多いのが実態だ。

 関東近辺では、シーズン初期の真鶴半島から伊豆半島に掛けてが、このくらいの小型が多い。これが南伊豆方面へ行くにつれて、サイズアップが望めるようになる。房総半島では、外房が特に実績は高い。平均サイズが20cmくらいで、時には30cm以上が釣れることも珍しくない。

 このムツ釣りの楽しさは、何といっても群れを寄せて釣ることにあると思う。群れで回遊してくることは前にも書いたが、表層にベイトフィッシュが多くいるときなどは、それを追って水面まで浮上し、時折エキサイティングなライズを見せてくれるのだ。

 実際にルアーで釣るときは、これと同じような状況を作ってやれると面白い。少しでも活性を高めてから釣った方が、ルアーに対する反応が長続きするからだ。

 だから無理やり神経質な釣り方で釣り続けるのではなく、最初は興奮させながら、ルアーをどんどんピックアップしてしまう。それを続ければ、群れが浮上してきて釣りやすくなるのだ。

 ポツポツと釣れるからと慎重に釣るのではなく、いかにして群れを効率よく釣り上げるのかも、ライトゲームの楽しみ方であると思う。


港口の常夜灯がポイントだ

 本文中でも触れたが、本来ムツは深い場所に棲息する魚だ。それが小型の頃に限って、夜の漁港周りに浮上してきてベイトフィッシュを食べまくっている。その漁港周りでも、より群れの濃い場所が、海面を照らしている常夜灯の周辺なのだ。しかも港口に近くて水深があるほど、より大きなサイズが接岸している確率が高い。
 その理由は今更言うまでもないだろうが、常夜灯下のプランクトンに集まるイワシなどの小魚を求めて、それを捕食する目的で集まってくるのだ。ベイトフィッシュをただ漠然と眺めるだけでなく、痛めつけられて横になって泳いでいる小魚を探してみよう。その下には、小魚を追い掛け回しているムツが見えるかもしれない。


鋭い歯に要注意!

 ムツを一度でも釣り上げた経験があれば、その歯の鋭さに恐怖すら感じるはずだ。歯に触れただけで、手は簡単に穴があいたり切れてしまう。あっという間に出血してしまうほどだ。料理するときにも、包丁の面で刃をこすって丸めるほどなのだから。

 そんな鋭さを持った歯だから、釣り上げてからの扱いにも真剣な注意が必要だ。フックを外すときには、面倒がらずにプライヤを使おう。また、ムツはウロコが剥がれやすいので、リリースするのであれば、魚体へ触れないように注意して欲しい。


繊細ながらもフッキングパワーが重要

 ムツを釣るには、2通りのタックルが多く使われている。そのひとつは、シンキングミノーを使ったものだ。ムツのサイズが20cm以上であれば、ラインブレイクを防ぐ意味でも、ミノーを使って飲ませないようにしたい。こういった使い方をするのであれば、先調子のバスロッドが使いやすい。

 ジグヘッドやショートスプリットリグなどのワームを使うのならば、より吸い込まれてラインブレイクしてしまう可能性が高い。そのため、中途半端に硬いロッドよりも、胴調子のメバルロッドタイプが面白い。アワセないでリーリングを続けると、うまい具合に口元へフッキングしてくれやすい。4ポンドタックルで、ルアーの近くだけにフロロリーダーをつけて対応しよう。


ミノーはストップ&ゴーが基本

 シンキングミノーでは、群れのいるポイントよりも下へ沈めることが最初の作業だ。そこからスローリーリングを開始して、ムツがルアーを追ってきたら一瞬止めてポーズをつける。バイトしなければ、再びそれを繰り返す。

 ムツは追い続けて捕食するよりも、その一瞬のスキを狙うケースが多い。それだけに、このストップ&ゴーのテクニックは有効なケースが多々あるのだ。


手前で誘い上げて群れを浮かせよう

 ワームを使ったジグヘッドリグなどでは、下の方に潜んでいるムツを狙いたい。ベイトフィッシュが時折水面を逃げ惑ったり、ムツのライズが見えるようなときは、下の方に群れがいると思って間違いないだろう。こういった状況の場合、ベイトフィッシュの群れからはぐれた1尾をエサとして狙っている。

 ところがそのような状況では、ムツの群れみんなが捕食しようとはしていないようだ。ボク自身の経験では、ここでムツの群れごと活性を高めることが有効であるように思う。それはルアーをアピールさせることで、気分を盛り上げてやるのだ。具体的には沈めたら誘い上げるという一連の動作を、何度も繰り返す。

 捕食しようとしたら、一気にルアーを水面から抜き上げてしまう。これを繰り返していると、群れは徐々に浮いてきて、そのままサイトフィッシングへ持ち込めるのだ。あとは再び群れが沈まないように、ルアーの沈めすぎに注意すればいいのだ。

戻る