006 軽いのに、重い?
ちゃ〜坊がロッドを片手に、何度も上げたり下げたりしている。
ちゃ〜坊
「う〜ん……」
みなとじい
「何やってる?」
ちゃ〜坊
「おかしいんだよな〜」
みなとじい
「何が?」
ちゃ〜坊
「このロッド、軽いんだよ」
みなとじい
「そうか」
ちゃ〜坊
「なのに……なんか重い」
みなとじい
「どっちなんだ?」
ちゃ〜坊
「だから困ってるの!(^^;」
ロッドを選ぶとき、気になるもののひとつが重さ。
軽いロッドなら、長時間使っていても疲れにくそうに思える。
でも・・・・・。
みなとじい
「ちゃ〜坊。ロッドを持ってみろ」
ちゃ〜坊
「持ってるよ」
みなとじい
「いつも釣りするときみたいに」
ちゃ〜坊がリールのあたりを握って、ロッドを前へ向けた。
みなとじい
「そのまま」
ちゃ〜坊
「また?」
みなとじい
「そのまま」
ちゃ〜坊
「…………」
みなとじい
「どうだ?」
ちゃ〜坊
「やっぱり重い」
みなとじい
「どこが?」
ちゃ〜坊
「どこって……」
ちゃ〜坊が、もう一度ロッドを構える。
ちゃ〜坊
「あれ?」
みなとじい
「ん?」
ちゃ〜坊
「先っぽが下がろうとする」
みなとじい
「そこだな」
ロッドには、全体の重さとは別にバランスがある。
同じくらいの重さでも、どこに重さが集まっているかによって、持ったときの感じ方は変わる。
ちゃ〜坊
「軽ければ軽いほどいいんじゃないの?」
みなとじい
「軽いのは悪いことか?」
ちゃ〜坊
「いいこと!」
みなとじい
「じゃあ、今のロッドは?」
ちゃ〜坊
「軽いけど……重く感じる」
みなとじい
「だろ?」
ちゃ〜坊
「また簡単じゃなくなった〜(^^;」
みなとじい
「ところで、どこを握ってる?」
ちゃ〜坊
「ここ」
リールの前後には、手で握る部分がある。
一般的に、リールシートより前をフロントグリップ、後ろをリヤグリップなどと呼ぶ。
ちゃ〜坊
「前だからフロント。後ろだからリヤ」
みなとじい
「そう」
ちゃ〜坊
「今日は簡単だ!」
みなとじい
「じゃあ終わるか」
ちゃ〜坊
「いや、それはそれで困る(^^;」
グリップには、いろいろな素材が使われている。
柔らかさ。
重さ。
濡れたときの感触。
耐久性。
見た目。
それぞれに違いがある。
ちゃ〜坊
「じゃあ、一番いい素材は?」
みなとじい
「またそれか」
ちゃ〜坊
「だって一番いいのが分かれば、それを選べばいいじゃん」
みなとじい
「何が一番ならいいんだ?」
ちゃ〜坊
「え?」
みなとじい
「軽さ?」
ちゃ〜坊
「うん」
みなとじい
「濡れたときの握りやすさ?」
ちゃ〜坊
「それも」
みなとじい
「丈夫さ?」
ちゃ〜坊
「それも欲しい」
みなとじい
「触った感じ?」
ちゃ〜坊
「大事!」
みなとじい
「見た目?」
ちゃ〜坊
「カッコいいほうがいい!」
みなとじい
「全部か」
ちゃ〜坊
「全部!(^^)/」
みなとじい
「欲張りだな」
どれかひとつだけを見れば、答えは簡単かもしれない。
でも実際に使う道具には、いろいろな条件が重なっている。
軽いけれど、傷みやすい。
丈夫だけれど、少し重い。
濡れても握りやすい。
手に触れた感じが好き。
どれを大切にするのかは、使う人や釣り方によって変わってくる。
ちゃ〜坊
「じゃあさ、みなとじいならどっちを選ぶ?」
みなとじい
「何に使うんだ?」
ちゃ〜坊
「雨の日の釣り」
みなとじい
「なら、濡れたときの握りやすさは気になるな」
ちゃ〜坊
「砂浜だったら?」
みなとじい
「傷みやすいところも見ておきたいな」
ちゃ〜坊
「長い時間ずっと投げるなら?」
みなとじい
「持ったときのバランスも気になる」
ちゃ〜坊
「なるほど……」
ちゃ〜坊が少し考えた。
ちゃ〜坊
「使う場所とか使い方を決めないと、“いい”って決められないんだ」
みなとじい
「だんだん分かってきたじゃないか」
ちゃ〜坊は、最初に持っていたロッドをもう一度構えてみた。
ちゃ〜坊
「でも、この先っぽが重く感じるのはどうすればいいの?」
みなとじい
「まず、どうしたら変わると思う?」
ちゃ〜坊
「また考えるの〜?」
みなとじい
「もちろん」
ちゃ〜坊はロッドを眺めた。
先が重く感じる。
なら、反対側は――。
ちゃ〜坊
「後ろを重くしたら……?」
みなとじい
「どうなる?」
ちゃ〜坊
「バランスが変わる?」
みなとじい
「試してみれば?」
みなとじいが、小さな重りをグリップの後ろ側へ仮に付けた。
みなとじい
「持ってみろ」
ちゃ〜坊が構える。
ちゃ〜坊
「あれ!?」
みなとじい
「どうした?」
ちゃ〜坊
「さっきより持ちやすい!」
みなとじい
「ロッドは?」
ちゃ〜坊
「え?」
みなとじい
「さっきより重くなったぞ」
ちゃ〜坊
「…………」
ちゃ〜坊がロッドを見る。
もう一度持ってみる。
ちゃ〜坊
「重くしたのに……軽く感じる」
みなとじい
「面白いだろ?」
ちゃ〜坊
「なんかズルい!(^^;」
みなとじい
「誰が誰をだましてるんだよ」
数字で見れば、重くなった。
でも手に持った感覚では、扱いやすくなった。
道具を見るとき、数字は大切な手がかりになる。
だけど、数字だけでは分からないこともある。
だから実際に持ってみる。
動かしてみる。
そして、
「なぜ、こう感じるんだろう?」
と考えてみる。
ちゃ〜坊
「よし、分かった!」
みなとじい
「何が?」
ちゃ〜坊
「軽いロッドが、一番軽いとは限らない!」
みなとじい
「……まあ、言いたいことは分かる」
ちゃ〜坊
「じゃあ今度から、ロッドの重さは見なくていいね!」
みなとじい
「なんでそうなる?」
ちゃ〜坊
「え?」
みなとじい
「数字も見ろ。持ってもみろ。そのうえで考えろ」
ちゃ〜坊
「見るもの増えてるじゃん!(^^;」
みなとじい
「それだけ選ぶ楽しみが増えたんだよ」
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