リールのギヤ比と糸巻き量 |
前回はリールの種類についてお話しましたが、どんなリールが自分の釣りに見合っているか分かっていただけましたか。今回はその中で最も一般的な、スピニングリールについて話してみよう。 構造は前回の話で分かってもらえたと思うけど、ベールアーム部分から、スプールへと糸は巻きつけられていく。このときスプールは上下運動を繰り返し、同時にベールアームはスプールの外側を回転する。ベールアームは一定の高さを回転するだけだが、スプールが上下に動く事によって、ラインはスプールへキレイに巻きつけられるのだ。 色々なリールを使った経験のある人なら分かるだろうけど、大きなリールと小さなリールとでは、ハンドルを少し回しただけで糸がたくさん巻き取れるものと、一生懸命たくさん回さないと巻き取れないものがある。これは単純に、リールの大きさの違いによる、スプールの大きさの差だ。 つまりスプール直径に円周率(3.14)をかけてやると、そのスプールの円周の長さが算出できる。その数値が、スプールの周りをベールアームが1回転して巻き取れる糸の長さなのだ。 ではハンドルを1回転させたときに、ベールアームはスプールの周りを何回転するのだろう。同じくらいの大きさのリールでも、ハンドル1回転あたりの巻取り量は異なる。ここにその秘密が隠されている。これこそが、俗に言う高速巻取りなどを実現させている機構なのだ。 リールのパッケージや、カタログなどを見てみよう。そのスペックの中には、大抵のものがギヤ比という項目が掲載されている。1:4.8や、1:5.2など、スピニングリールではこれくらいの数値が一般的だ。左側の数値の「1」がハンドル1回転、右側の数値「4.8」などが、ベールアームがスプールの周りを回転する量なのだ。 ここまで説明すれば、意味がもう分かってもらえただろう。つまり「1:4.8」のギヤ比のリールというのは、ハンドル1回転でベールアームがスプールの周りを4.8回転するリールという事になる。 それではここでもうひとつ、簡単な計算をやってみよう。例えば、スプールに糸を巻いた状態で、円周がおよそ15cmというスプールサイズのリールがあったとしよう。ルアーをキャストして、その時点でも円周の15cmは変わらないと仮定してみよう(現実にはキャストによって糸巻き量が減っているので、15cmより少ない)。 ギヤ比が「1:4.8」のリールと、「1:5.2」のリールがあったとすると、それぞれのハンドル1回転あたりの巻取り量は何cmになるか。簡単な計算だよね。「1:4.8」の場合には、15cm×4.8=72cmとなる。もうひとつの「1:5.2」は、15cm×5.2=78cmになる。 たった6cmの差だと感じるかもしれないけど、ルアーを50m投げたときにハンドルを回す回数は、およそ70回転と64回転の違いとなる。ハンドル6回転ほどの差となって現れるのだ。 約4.5mの違いを大きいと見るか小さいと見るかは、アングラー自身が決める事でもある。しかし少しでも高速巻取りをしたいターゲットを狙う時には、こういったメカの差を利用することも重要だと言える。 ちょっと堅苦しい話になっちゃったけど、今までリールを選んでいたときに、大きいから速くリールを巻けると信じていたならば、こういったスプールの径とギヤ比を、もう一度確認してみるといい。今まで気づかなかった事実を知る事になるかも知れないし、それによってルアーがもっと楽しくなるかも。 但し、もうひとつだけ知っておいてもらいたい事がある。それはギヤ比が高ければ、より良いことなのかという問題だ。確かに速く巻きたいときには、ギヤ比は高い方が楽に巻き取れる。しかしパワーに関して言えば、正反対の事がいえるのだ。 ここに噛み合った1組のギヤがあるとしよう。小さい方のギヤをハンドルに例え、大きい方のギヤを回そうとする。小さいギヤの径は大きい方が、大きいギヤを速く回せる。ところが小さいギヤを更に小さくすると、速くは回せないけど少ない力で楽に回すことができる。 身近なところでは、自転車のギヤ切り替えが似ている。上りの坂道は低いギヤで、スピードを出したいときは高速ギヤに切り替える。力を取るか、速さを取るかも、リールでは重要な分かれ目となる。 自分自身がやろうとしている釣りに対して、スピードが欲しいのか、それともパワーが欲しいのか、それを知っておくことによって、より自分に有利なタックルを選びたい。 |