このページは 週刊テレビから発刊されている Hello Fishing
138号 に掲載された記事です

キャスティングテクニック・アンダーキャスト編

 基本的なオーバーヘッドキャストとサイドキャストがマスターできたら、次はアンダーキャストだ。このアンダー方式のテクニックには、大別して2種類がある。

右利きの人を例に取ると、右手でロッドを構えたら、そのまま右下をロッドがトレースするように振る方法だ。そしてもうひとつは、右手に持ったロッドを自分の左下や真正面からスイングする方法だ。

オフショアでよくやられているのは前記の方法で、正面下方に竿先を向けて構え、そのままバックスイングせずに真下で円を描くようにロッドを回すことで、ロッドをうまく曲げてやる。そして押し出すようにしてから前方へロッドを振るのだ。

この方法で注意したいのは、ベールの返し忘れだ。多くのルアー船では、キャストの際にアンダーキャストを推奨する。これはロッドを振りかぶってのキャストで、後方のアングラーを釣らないためだ。

しかし考えようによっては、アンダーキャストでも危険はある。ベールを返し忘れたり、ライントラブルでルアーが前方へ飛ばせなかった場合には、そのルアーは自分の後ろへ飛んでいくことになる。これが後ろの人にぶつかったらと考えたらゾッとする。

できることなら、片側だけにしかお客さんを乗せないでキャストさせてくれる船を望みたい。それなら安心してオーバーヘッドでキャストできるはずだ。もちろん船上で後ろを通過する人はいるだろうから、キャスト前の後方確認は必須だ。

さて、話はちょっとそれてしまったが、もうひとつのアンダーキャストだ。それほど遠投をすることはできないのだが、左サイドでのアンダーキャストも覚えておきたい。これは右下に障害物があるときに有効であり、左だけしかスペースの無い場所では重宝する。

右利きの人が右側からアンダーキャストする場合、ロッドに付けられたガイドは投げ終わったフィニッシュで上を向いているはずだ。下から上に押し出すようにするので、完全なアンダーキャストなら、ガイドは上を向いてフィニッシュを迎えるしかないのだ。

ところが自分の左側のアンダーキャストの場合には、ピッチングに近いロッドの軌跡を通る。つまりそれほど遠投を目的としないので、ちょっと長めのタラシで、うまくロッドを曲げて真下から弾き出すようにキャストするのだ。うまくタイミングが取れないようなら、更に長めのタラシにして、遠心力を利用してロッドを曲げるとやりやすい。

まあめったに使うことはないと思うので、前記の一般的な利き腕サイドでのアンダーキャストだけでもマスターしておけば良いだろう。ただし前にも書いたが、ベールの返し忘れやライントラブルには、十分すぎるほどの注意を払って欲しい。

ベールを返し忘れるなんてやらないと思われがちだが、目の前にボイルが出現したときなど、フィールドで見ているとこのような失敗をしているのを多く目にする。アングラーなら誰しも目の前にボイルが出現すれば、ドキドキしながらあせってしまうのも当然のことだろう。

問題なのは、キャストミスによるベールの戻りだ。スピニングリールのベールアームの多くは、回転することで特定の位置に衝撃が加わると戻るようになっている。最近出始めている自分の手で戻すタイプでなければ、この現象は起きやすくなっている。これを減らすためには、ベールアームを回転方向に対してロックできる位置にすることだ。

さらに最近はPEラインの使用頻度が多くなっている。これはロッドのガイドやベンディングへの相性が悪いと、そのままキャストでラインがトラブルを起こしやすい。しかもそれを意識してぎこちないキャストをしている人は、そのまま一番下のガイドに絡むほどのミスを犯しているようだ。

オーバーヘッドなら失敗しても高く上がってしまうか、目の前にズボッと突き刺さるだけだ。しかしサイドキャストやアンダーキャストの場合には、常にこういった危険が付きまとっていることを忘れないで欲しいものだ。どんな投げ方にも利点もあるだろうが、必ず欠点も存在していることをお忘れなく。

さて、これらはオーバーヘッドキャストに比べると、ハッキリ言ってかなり難しい。ロッドをスイングできる軌跡の距離がとても短いため、その間でロッドを有効的に曲げ、そしてちょうど良いタイミングでラインを離してやらなければならないからだ。これはもう、練習を積み重ねるしかない。特別な練習方法はないけれど、左右に障害物を置いて、目の前だけが開けているシチュエーションで試してみよう。


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