このページは 週刊テレビから発刊されている Hello Fishing
144号 に掲載された記事です

バックラッシュはなぜ起きるか

何年もルアーフィッシングをやっていると、ほとんどのアングラーがバックラッシュという現象を経験しているよね。ベイトキャスティングリールでは慣れないとしょっちゅう起きるこの現象だけど、スピニングリールでもラインがグシャグシャになることがある。今回は、このバックラッシュ現象を考えてみよう。

そもそもバックラッシュという現象は、どんなことが起きているのかを知ることが必要だ。簡単にベイトキャスティングリールで考えてみると分かりやすい。ご存知のように、ベイトキャスティングリールの場合は、キャストするときにスプール自身が回転し、ルアーを遠くへ飛ばすように作られている。

ところがロッドを勢いよく振ったとしても、初速でスプールは一気に回転し、飛んでいくルアーが何らかの抵抗で外乱を受けることがあるのだ。例えば極単に空気抵抗の大きなルアーや、極小軽量ルアーを使った場合だ。

つまりスプールが勢いよく回転を続けるにもかかわらず、ルアーはそれほど飛んでいこうとしない現象が起きえる。するとルアーの飛んでいく速度に対して、スプールの回転速度が上回ってしまい、スプールのオーバーランによりラインだけが出ようとしてしまうため、グシャグシャのバックラッシュとなってしまう。

ベイトキャスティングリールの場合は、メカニカルブレーキやマグネットブレーキなどによって、スプール側に適正なブレーキを掛けておくことで、スプールのオーバーランを防いでいる。イメージとしては、常にルアーの重さによって、スプールからラインを引き出すような調整といえば分かるだろうか。

それではスプールの回転しないスピニングリールでは、何でそのような現象が起きるのだろう。スピニングリールの場合には、ラインの放出抵抗も少ないし、オーバーランするスプールもないので発生はないと考えられがちだ。

大物狙いで大型ルアーをビュンビュンとキャストしている釣りしかやってないアングラーは、おそらく経験が少ないだろう。そう、スピニングリール独特のこの現象は、軽量ルアーを使ったとき、もしくはリールの適正ラインより太いものを使った場合に起きやすいからだ。

軽いルアーを使うということは、キャストした後にリールを巻くと、スプールに対してフワッと緩く巻かれてしまう。ところが常に緩く一定のテンションで巻かれているかというと、必ずしもそうではない。緩く巻かれたラインの状態で魚を掛けたりすると、緩いラインの上からラインはスプール上で巻き締まってしまうのだ。

これを何度も繰り返すと、下の緩いラインが徐々に浮き上がるような感じで顔を覗かせてくる。これがあるときスプールの下側から一緒に引っ掛かるように引き出されて、一気にラインを放出するバックラッシュとなるのだ。

だからスピニングのバックラッシュでは、スプールの下からのラインが一緒に絡みついていることが多いのだ。その状態でスプールから全てが飛び出すと、ガイドに団子状態で飛び込んでいき、最悪の場合はそこに引っ掛かってラインブレイクとなってしまうのだ。

これらの現象を理解してもらえば分かるだろうけど、ラインのコシが硬かったりしても同様の現象が起きてしまう。ラインはスプールに硬く巻くことができないので、緩めに巻き上がってしまう。だから市販されているラインには、スピニングリール対応のソフトラインなるものがあるというわけ。

もうひとつ最近のリールで気になるのは、逆テーパーの採用されたタイプだ。本来は放出抵抗をスプール側で抑制するために開発されたスプール形状だけど、実はこれにも落とし穴がある。

PEライン用が本来の姿なので、それなりに密着してきれいに巻けるのである。ところがナイロンラインをこのタイプに巻くと、わずかにフワッとなっただけで、スプールの上側の径が太い部分から下に落ちてしまうのだ。径の太い部分から細い部分に落ちてしまうと、当然弛んだ状態になる。そのまま次にリールを巻いたら、下の弛んだ部分は巻き締まりで顔を出してくる。これが次のライントラブルへとつながる。

それでも扱いやすいので、ボク自身はナイロンでも愛用している。それはちょっとした気遣いで、ある程度のトラブルが防げるからだ。例えば時々チェックして、硬く巻き直すこともできる。あとはリーリング中に人差し指を伸ばしたままにして、ラインに触れることで適度なテンションを保つこともできる。原因を知って、対策を考えてみよう!


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