このページは 週刊テレビから発刊されている Hello Fishing
154号 に掲載された記事です

マッチザベイトのルアーセレクト

前回までで、ルアーの種類別基本操作は終了だ。今回からは、少しずつノウハウ的な内容に移行していこうと思う。内容的には基本編の復習みたいなものもあるだろうけど、改めて確認するという意味で覚え直してみよう。

 今回のテーマは、マッチ・ザ・ベイトを考えたルアーセレクトだ。ルアーフィッシングを楽しんでいる人なら、マッチ・ザ・ベイトという言葉を聞いたことがあるだろう。その意味と、実際にルアーをセレクトするコツについて、ちょっとばかり紹介してみよう。

 まずはマッチ・ザ・ベイトという言葉を知らない人のため、簡単に説明しておこう。何となくそれらしい単語が並んでいるけれど、このまま直訳しても意味不明だ。しかしルアーアングラーだったら、何となく意味が通じてしまうから不思議。

 この言葉をルアーアングラー的に表現すると、そこにいるターゲットの魚に捕食されているベイトフィッシュに、最も近いルアーで狙って釣ると言えばいいだろうか。簡単に言うと、そこにいるベイトフィッシュに似せたルアーを選び、狙ったターゲットを釣るってこと。

 例えば稚アユの遡上するシーズンに、シーバスがそれを捕食していたとしよう。この場合、稚アユがベイトフィッシュで、それに似せたルアーを使ってシーバスを釣れば、マッチ・ザ・ベイトで狙ったことになる訳だ。これも立派なゲームフィッシングの、ルアーアングラーとしての戦略である。

 ここで注意したいのは、単純に稚アユを追っているからそれに似せるのではなく、泳いでいる稚アユの中で、実際に捕食されているサイズを意識して見破るようにする。捕食されている稚アユが6cmなのか、それとも9cmなのかなどを確認することが重要なのだ。

 更にそこにいるシーバスが、どの水深でどんな捕食の仕方をしているかを確認しよう。水面下1mでしか捕食してないのか、それとも水面直下での捕食か。時には水面で激しいボイルをしながらの捕食もあるだろう。それによって、ルアーの種類を決める。フローティング、シンキング、ペンシルベイトなどを決めるのは、こういった要素からだ。

 シーバスの場合には、これが魚のようなベイトフィッシュではなく、バチと呼ばれているゴカイなどの環虫類のケースもある。春先のバチ抜けはシーバスにとっても一大イベントで、ゴカイを模した水面で操作するルアーなどが、多くのアングラーに好まれて使われている。

 このようにいかにしてそこで捕食されているベイトにマッチさせたルアーを選ぶかが、マッチ・ザ・ベイトの理想的な考え方だ。本来のルアーフィッシングは、アトラクター的な意味合いで使うものであるような気もするが、このマッチ・ザ・ベイトという戦略は、明らかにルアーをエサとして扱っていると言える。

 それだけにルアーのカラーリングや泳ぎの仕上がりも、より本物に近いナチュラルなものを選ぶケースが多いようだ。カラーリングを水色に合わせたりするのも、ひとつのマッチさせるための考え方であると言えるだろう。

 さて、そのフィールドに通いなれたアングラーならいざ知らず、多くのアングラーはこのマッチさせる以前の問題を抱えていることが多いようだ。つまりターゲットが捕食しているベイトと、実際に捕食しているベイトとを見誤るケースだ。

 例えば多く見かけるのは、ベイトフィッシュのサイズだ。水面で弾き飛ばされているイワシが、至る所で確認できたとしよう。パッと見ただけでは、多くのアングラーがそれをベイトフィッシュだと思うのではないだろうか。ところがそれは弾き飛ばされているだけで、実際にはそれより下のレンジにいるシラスを捕食しているなんてケースもある。

 捕食を繰り返しているレンジについても、同じようなことが言えるだろう。例えば前記のように、イワシが水面で跳ね飛ばされていたとしよう。ところがイワシは逃げ惑って水面を飛び跳ねているだけで、実際には水面下でしか捕食してないケースもあるのだ。

 よくマッチ・ザ・ベイトを意識しても、なかなか思うように釣ることができないと感じているアングラーもいるようだ。そんな場面で行き詰ることがあったら、もう少し実際のフィールドを観察し直してみてはどうだろうか。じっくりと観察を続ければ、それまで見えてなかった部分に気づくかも知れない。

 最後になるけど、マッチ・ザ・ベイトは必釣パターンではない。時にはあえてベイトと異なるルアーを泳がすことで、アピール力を増して釣りやすくすることもあるのだ。


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