このページは 週刊テレビから発刊されている Hello Fishing
173号 に掲載された記事です

春の濁りと水温上昇の関係を知ろう

皆さん、お待たせしました。ちょっとの間だけお休みをいただいてましたけど、この号から「ソルトルアーあ〜んな話こんな話」の復活再開で〜す。これが皆さんのお目にかかる頃には、長かった寒い冬もようやく終わりを告げているかな。

 普段過ごしている時に、肌で感じている陽気が暖かくなってきても、海の中がすぐに春になっているとは限らない。海の中に温泉でも出ているような場所ならともかく、空気中が暖かくなったからといって、海水温が一気に上昇するってことはないからね。

 そう、海の水温を高くするには、最初に大気中の気温が上昇する必要がある。そして気温が上昇することによって、海の表層における水温が徐々に上昇を始める。いわゆる大気と海水との熱置換が行われ、海水の温度が上昇するんだ。

 しかしいくら表層の水温が上昇しても、そのままでは海底の方までは暖かくはなってこない。ところが自然界とはうまくできたもので、この表層の暖まった海水は、ターンオーバーと呼ばれる現象によって、海底の冷たい海水と入れ替わってくれるのだ。

 つまり表層の暖まった海水が下層へ移動して、下層の冷えた海水は表層へと入れ替わる。この表層にきた冷たい海水が、再び大気の上昇している気温によって、暖かい海水へと変化してくれる。このターンオーバーという現象によって、海水は徐々に上下を入れ替えながら、水温を上昇させていく。

 このような春の暖かさによって、水温が上昇しながら春の潮へと移り変わっていく。この時期の陽気を、三寒四温と呼んでいるのを知っているだろうか。文字通り春の陽気は、三日の寒い日が続き、その後に四日の暖かい日が続く。こうやってジワジワと春になっていく。

 ボクたちアングラーにとっては、待ち焦がれた春の到来と言ってもいいだろう。ところがこの時期の海には、ターンオーバー現象がもたらす不具合もある。あくまでもアングラーにとってだけど、底潮が表層と入れ替わるということによって、濁りをも持ち上げてしまう。これが春の濁り潮と呼ばれているものだ。

 春の海が濁りがちなのは、こういった現象からくるケースが多い。他にも一気に水温が上昇することによって、表層のプランクトンの死骸がもたらす、赤潮などが似たような現象として知られている。これも急激な気温上昇による、表層水温上昇がもたらすものだ。

 ボク達アングラーにとっては、一般的には嫌われている現象と言えるだろう。しかし潮濁りや赤潮が、必ずしも釣果を悪くしてしまうとは言い切れない。潮が濁りすぎて釣れないとか、今日は赤潮が出たから釣れないなんて、釣れない時の言い訳として口にするアングラーは多い。

 たしかに海面を赤潮が覆い尽くすことによって、そこの魚は釣り難くなるかも知れない。しかし重要なのは、その濁った部分がどのレンジまでを覆っているかだ。実は表層しか濁ってないとすれば、底生魚にはさほど影響してないかも知れない。酸欠状態になるほどでもなければ、釣れる可能性を否定することはできないはずなんだ。

 アングラーの気持ちとしては、濁りを見たら諦めるのではなく、まずは状況を把握することを意識して行動したい。濁りを見て諦めるのではなく、可能性の有無を確認してからでも遅くはない。そしてルアーをキャストして、魚の反応を見てから判断してもいいだろう。

 春はアングラーにとっても、気持ちがウキウキさせられる季節だ。しかし冷たく澄みきった冬の潮が、暖かい春の潮へと入れ替わるまでに、このような自然界のメカニズムが活躍していることを知っておきたいものだ。

 こういった状況を把握しておくことで、気温上昇した日からどこでどのような水温変化があるかを予測していきたい。それが分かれば、ターンオーバーによる濁り、そして赤潮が発生しやすいエリア、そしてそれらに出会ってしまう確率を予測することができるだろう。

 1年のうちで、この春の潮が入れ替わる季節は、釣りとしては難しいと思う。前日より水温上昇すれば釣りやすいのが定説だけど、場合によっては逆もあると知っておこう。


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