このページは 週刊テレビから発刊されている Hello Fishing
174号 に掲載された記事です

周囲より水温の高い場所を見つけよう

春先の海は、三寒四温によって徐々に水温上昇を見せてくれる。ロックフィッシュと呼ばれている根魚の多くは、春先の水温上昇に浮かれるかのように、少しでも水温の高い場所を求めて浅場に寄ってくる。これは春先に産卵行動を起こす、カサゴやムラソイといったロックフィッシュに共通して言えることだ。

 つまり言い方をかえれば、春先の水ぬるむ頃の場合、少しでも水温が高い場所を狙うことによって、より活性の高い個体に出会うことができると考えられるんだ。産卵行動を目的として浅場へ寄ってくるロックフィッシュにとって、少しでも水温の高い場所は、カニなどの甲殻類を捕食するためにも、絶好のレストランになっていると言えるんだ。

 世間一般にまだ釣果が聞こえてこないような早い時期でも、こういった場所を見つけることができさえすれば、他のアングラーよりも先にロックフィッシュに出会うことができる。「まだ時期が早いよ。水温が低いからね・・・」なんてことを言っているアングラーもいるだろうけれど、より活性の高い個体を探しながら釣るのも、ポイント選定眼を養えていいんじゃないかな。

 さて、前回のテーマの中で、春先の水温上昇のメカニズムは理解してもらえただろうか。気温が上昇することによって、大気の温度が海水表面の水温を上昇させる。そして暖められた表層の海水は下へ、ボトムの冷たい水は表層へとターンオーバーを繰り返す。これにより表層に上がった冷たい海水は、再び大気によって暖められていく。

 ここまで話した時点で、勘のいい皆さんは「な〜るほど!」って思ったかも知れないね。つまりより水温が上昇しやすい場所とは、空気に触れる海水が動きやすいエリアだと考えられる。海全体の海水温が一気に上昇するのではなく、部分的に暖かさが広がっていくと考えていい。

 たとえば沖の方の特に変化のない場所では、表層のごく浅い層だけが温まる。このような場合には、上下の海水が入れ替わるためには時間がかかってしまう。ところが岸近くのエリアでは、波によって海水は攪拌されやすくなっている。たとえば砂浜の波打ち際や、磯の岩に砕け散る波などである。

 今回のテーマではロックフィッシュを挙げているので、前記の岩場を考えてみよう。岩場といっても、急深の磯から遠浅のゴロタまで様々なシチュエーションがある。これまでの話から単純に考えれば、深いエリアより浅い方が水温上昇に対して有利だと分かるだろう。

 その理由は、単純に水深が浅くて攪拌されやすいからだ。ただし、その時々の気温と海水温の関係によっては、この季節でも稀に気温の方が低いこともある。そんな状況では、逆に外気温の変化を受けにくい深場のエリアの方が、魚に出会える確率が高くなると考えられる。

 まあそのようなケースは別としても、一般的には浅場の方が水温は上昇しやすくなる。更にその浅場のエリアでは、最も水温が上昇しやすいピンポイントを見つけ出したい。今までの説明からも分かるように、攪拌されやすい場所が有利であることが条件だ。

 これらを総合的に考えると、より波に洗われている場所が有利であることが分かる。洗岩という言葉を聞いたことがあるだろうか。海面に頭を出している岩で、寄せ波などによって常に洗われているような状態の岩のことを指している。

 この洗岩こそが、最も海水が攪拌されやすい場所と考えられ、周囲よりもより短時間で水温が上昇しやすい場所と言える。つまり大きめの洗岩周りは、一般的に考えて周囲よりも水温が高くなりやすい。潮の動いている場所、そして沖から接岸してくるロックフィッシュにとっては、近くにカケ上がりのあることも重要になる。

 沖で待機しているロックフィッシュは、水温の上昇に合わせて浅場へと寄ってくる。だからこそ控える場所が近くにあれば、その岸寄りにある洗岩にはロックフィッシュが集まりやすい。

 海底の地形を想像して、より接岸しやすい洗岩を見つけ出すことが、早春のロックフィッシュに高確率で出会うコツなのだ。こういった自然現象を考えながら、ルアーフィッシングを楽しみたいものだ。


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