1995年7月号 苔食う魚も好き好き


 昨年来の異常渇水で今もなお給水制限が続く地域もあるようだ。減水の影響
で、渓流が在りし日の姿でアングラーを楽しませてくれるためにはあと2年く
らいはかかるだろうと言われている河川もあるらしいネ。 この異常渇水の影
響をモロに食らったのが小型ミノーやスプーンなどで渓流を中心に商売してい
るルアーメーカーなんだって。メーカーによっては昨年の夏以降から、渓流で
使うような小型のミノーなんかが売れ残っているという情報も最近耳にするん
だよネ。

 ところがグッドタイミングでいい話がメーカーに舞い込んできた。それは海
のルアーフィッシングで手軽にトラウトタックルで楽しめるターゲットが注目
を受け始めていることなんだ。早い話が、このソルト&ストリームでも好評を
いただいている(らしい?)メッキを始めとするライトタックルゲームの事な
のだヨ。 ここ数年の間、つりマガジン本誌で地道に紹介と提案を続けていた
僕としては、喜んでいいのか悲しんでいいのか。でも喜んでいる人がいっぱい
いるらしいから…、よかったんだろうな。

 今でこそ笑って話せるけど、当時ライトタックルをやろうとすれば担当のK
哲氏からはおほめの言葉を頂き、
『野地さん、またそんなチマチマしたことやってるの?いいかげんドッカ〜ン
とハデなのやってヨ!そんな釣り流行るわけないでしょ』
 この頃に僕が言っていたこと、思っていたことはというと、
『そんなことないって。釣りにはいろんなジャンルがあって、それぞれが面白
いんだ。だいたいお金かけなきゃ釣りが出来ないとか、これじゃなきゃ釣り
じゃないなんて思っている人は少ないと思うよ。みんなもっと手軽に行きたい
時に行って簡単に出来る釣りを、ホントは望んでいるんだと思うヨ。まして結
婚してから時間的にも金銭的にも制約されるようになっちゃった人はた〜くさ
んいるんだから。その時になってみたらきっと分かるんだから。自分自信がや
りたいように出来る人なんてホンノひと握りなんだからネ』

 実際つりマガジンで手軽なライトタックルの紹介を始めた頃はこんな感じで
のスタートだったと記憶しているのですよ。もっとも本人に話したらこう言っ
てた。
『そんなこといった覚えねえゾ。全く覚えてナイ』
 まあ、最初の頃は僕も不安はあったんだけど、現実には僕の不安は時と共に
かき消されていったんだ。そして今のように手軽に出来る海のライトタックル
は現在注目の業界成長株となってしまったのでR。
 こんな事があったんで、よけいに僕はせっかく人気が出てきた海のライト
タックルを暖かく見守っていきたいんだよネ。火がついた理由は何であっても
ね。

 世の中には色々な理由があって海外で大物を釣りたくても行けない人は多い
はずだと思う。何しろお金がタップリかかるからネ。お金がないし時間がな
い、こんな人が世の中にいて、今まで海のルアーは大変そうだナ〜と思ってい
た人達が共感してくれた結果流行ったんだと思う。
 人それぞれ価値観の違いはあっても、趣味の世界ではやってみて楽しくなけ
ればやめてしまえばいい、やらなければいい。ライトタックルって安上がりだ
からそんな気軽さも持ってるんだよ。でも、そんな僕たちの努力?が報われて
ライトタックルがこれだけ人気を得たんだから、つりマガジンとソルト&スト
リームの愛読者の方には感謝しないといけないね。本当にありがとうございま
した。これからも本誌をヨロシクお願い致します。


 話は変わるけど、今回のカラーページで「狩野川河口のボラ」を見てくれた
かナ?
 その中でちょっと書いてあるんだけど、メッキがコケのようなモノを食べる
こともあるって話だけどさ。 それまでメッキは小魚などを追い回して捕食す
る完全なフィッシュイーターだと思っていたんだ。しかし昨年のシーズン中に
海が数日間ハデに荒れ続いたことがあって、たまたま南伊豆の伊浜港に立ち
寄ってみたんだ。この日は西伊豆側がほとんどダメで寄ってみたんだけど、港
内一面がメッキの群れで埋め尽くされているといった表現がふさわしい状況に
出くわしたんだ。

 ミノーでもポッパーでもお構いなしにチェイスしてくる。フッキングし損っ
てもそのままリトリーブを続ければすぐにヒットするし、足元までついてきた
ヤツの目の前にルアーをポトンと落とすだけでもガバッと出るし、何をやって
もヒットの連続だったんだ。
 そして釣り疲れて(この時はホントにメッキを釣り飽きたと感じた)ふと我
に返った時のことだ。堤防の付け根に船揚場のスロープがあるんだけど、そこ
にはいつものようにボラの大群が底に頭をくっつけるようにしてコケのような
モノを食べていた。何の気なしにミノーをキャストしたらいきなりそのボラ?
がミノーにヒットしたんだ。ンッ!

 なんかファイトがメッキみたいだなと思っていたら、ナント釣り上げたら変
わっちゃたんだよ、ボラがメッキにさ。驚いてそのボラ?の群れをよく見てみ
ると、ぜ〜んぶメッキだったんだよ、コレガ。驚いたのナンノちゃん。いっ
しょにいた仲間たちもビックリして狂喜乱舞の世界になってたね。だってボラ
だと思ってたのがメッキの超大群で、そのメッキがボラのようにコケをつっつ
きまくっているんだぜ。ビックリなんてもんじゃなかったよ。結局タイムアッ
プでこの日を終えた。

 今考えるとシケ続きで沖を回遊できず港内にもエサのベイトフィッシュがほ
とんどいなかったから、しかたなくコケ(正確には底についている小さなムシ
でも食べてたのかもしれないけど)を食べてたのかモ。
 しかし翌週の出来事。今度は西伊豆の松崎港に流れ込む川の中で、エサはい
たのに同じような光景に出会ったもんだから分からない。この時は堰堤の下で
やはりボラのように底のほうをつっついていた。
 自然界って不思議だよネ〜!