1998年11月号 ちゃんとキャストできてる?



 最近メーカー各社から続々と発売されているラインについて、何となく感じ

ている事がある。以前はより安定した強度を持つライン作りに、各メーカーが

しのぎを削っていたように思える。

 安定した真円度、そして太さの均一性、更には同じ強度表示のラインでも、

極力細く仕上げて細さを自慢するメーカー。そのような方向性でラインの開発

販売は進んでいたような気がする。

 すなわちJGFAもしくはIGFA規格にのっとって、大物記録申請を行え

るラインとしての存在価値が最大のポイントとして作られ、そしてまたユーザ

ー側も、その方向性の商品に心を動かされるルアーマンが多かったようだ。



 ところが、最近はちょっとばかり傾向が変わってきているような気がする。

ボクの周りのルアーマンだけなのかも知れないけど、ひと頃よりは記録申請に

こだわる人が減ってきたような気がする。

 ある仲間から聞いた話しでは、限られた条件の中で魚を釣っている限り、少

しでも不利な条件は減らしたい。つまり、記録申請にこだわり過ぎて、キャッ

チできる魚をブレイクなどで逃がす事も多いのではと言う疑問があるようだ。



 現在は様々な種類のラインが販売されているけど、その代表的な物はナイロ

ン、フロロ、PEの3種類だろう。それぞれ特徴を持ち、それらをアングラーが

正確に使い分ける事によって効果を発揮してくれる。

 彼にしてみれば太いラインで魚をヒットさせるまでの過程で不利なゲームを

組み立てる必要はない。だから、同じ太さでも強い強度を持つラインを要求し

たいと言うのだ。



 先頃DUELが発売した田辺氏プロデュースのバス用ラインは、それこそ彼

のようなルアーマンが待ち望んでいた物なのかも知れない。

 それとは逆に、強度や伸びの少なさはもちろんのこと、ストレスを感じさせ

ない扱いやすさを追求して作られたのがアイルトラウトだ。寒い冬の時期にラ

イントラブルが頻発するラインは意外なほど多い。



 ところがこのラインは、バックラッシュなどのトラブルが起きにくいだけで

なく、グシャグシャに絡めても比較的簡単にダメージを残さずほどくことが出

来る。

 これからのラインはUVカット以外にも、細くて強く伸びも少ない、そんな

オールマイティな性能が望まれていく。既にそう言った方向に動き始めている

とボクは思う。しかもそれはナイロンやフロロにとどまらないはずだ。

 むしろPEを含めて考えると、ソルトでは徐々にナイロンやフロロもPEに置き

換わって行くのではないかと思えるほど、各メーカーはPEにも力を入れている

ようだ。近い将来、廉価版のPEラインなんてのも発売されるのかも知れない。



 最も、必ずしもPEが万能では無い事も知っておこう。車の競技だってタイム

を出すのと楽しむのではセッティングが違う。これと同じ事が言えると思う。

必ずしもコントロール性能の良さイコールいいタイムとは言い切れない。その

逆も言える。

 どちらが良いとは言えないが、少なくとも多くのビギナーにも扱いやすいモ

ノは、商品として存在する価値があると言える。そんなPEが発売されれば、今

以上にPE人口は増えていくことだろう。



 最近のPEを使うルアーマンからの多くの意見は、非常に多いのがスピニング

リールでのバックラッシュ現象や、オルブライト部分がガイドへ引っかかる事

によるトラブルの多さだろう。

 しかし、これらのほとんどは自身のキャストフォームに問題のあることが多

い。または極端に大きなショックリーダーの接続部分が障害となっていること

も多い。メインラインとショックリーダーの太さの差を付け過ぎる人にその傾

向が強い。



 投げ釣りを専門にやっているベテランキャスターに言わせると、ルアーしか

やってない人は根本的に投げ方がヘタだからトラブルが多いんだと断言する人

もいる。

 それに対応したD社のABSを搭載しているリールでも、これらのトラブル

が多いのは何故だろう。

 メーカーとしてもPEのバックラッシュに対応できているから販売したと思う

のだけど、一般のルアーマンは発生している。

 メーカーのテスターと呼ばれる人達はそれなりに優れた人なので、初心者の

起こしやすいトラブルの再現が難しいのではないだろうか。



 色々な人のバックラッシュ現象を見てきているうちに、遠心力を上手く使っ

てない人に、このトラブルが多いように感じている。ちょっとしたタイミング

とコツなのだけど、投げ釣りのキャスター達は確かに上手く投げている。

 トラブルを起こしやすい人のキャストで共通しているのは、エンドグリップ

側を握っている手の引きつけが中途半端な事と、遠心力を利用せずににロッド

ティップだけでキャストする傾向のある人だ。

 こういったキャストをする人は、通常のナイロンラインでも同じような現象

があったはずだ。特に速度変化の起きやすいショックリーダーを付けた状況で

発生しやすい。



 ところが、これが自分のキャストのせいではなくリールやライン、そして使

っているPEラインの特性に因るものだと思っている人が多いようだ。たしかに

要因としてはあるのだけど、現実にはそれ以前の問題であることが多い。



 初心者ほど、ちゃんとキャスト出来る人の話を聞くから上達は早いのだけど、

ちょっとばかり慣れた人に限って失敗は全てタックルに罪をなすりつけている。

大して罪もないタックルが可哀想だ。

 時代は間違いなくPEラインを必要とする時代に突入しつつある。ライントラ

ブルで悩んでいる人は、自分のキャストフォームを振り返ってみてはいかがだ

ろう。