2009.06  Vol.2 カトルクラッチ



連載の2回目は、アオリイカのエギングを語るうえで欠かせないロッド・カトルクラッチだ。YO-ZURI(現在のDUEL)さんとのお付き合いが始まり、ボクのエギングには新たな展開が・・・。ノジングの原点を生み出してくれた伝説のロッドは、今も語り継がれる・・・。


 今でこそ驚くほどの盛り上がりを見せているエギングも、当時はそれほどやっているアングラーは多くなかった。「イカは魚じゃないから面白くない」とか、「キャッチ&リリースするのにイカはつまらない」・・・、な〜んて言ってるアングラーの多かったこと・・・。

 それでもボクは、近所の漁港で手軽に楽しめる、アオリイカのエギングにのめりこんでいた。その頃は、アオリイカの釣り場でエギをキャストしている人などまったく皆無で、自分たちの仲間くらいのものだった。

 そんな時期に、ソルストが創刊されることになり、時を同じくしてエギングの記事を掲載することになった。その頃には「エギング」などという表現は無く、「エギを投げに行こうよ〜」ってノリのような雰囲気を持った釣りだった。

 何でもかんでも「・・・ing」を付けることで、いつの間にか浸透しちゃったんだよね〜。それと同じような感じで、ボクがやっていた独特のボトムを探る大型狙いの釣り方まで仲間内から「ノジング」と呼ばれるようになっていたのも、時代の流れなのかな〜。

 さて、この釣り方をやるために重要な大役を担っていたのが、今回の紹介で登場する「カトルクラッチ」だ。このロッドは、YO-ZURIブランドでアオリイカ戦略として発売された最初のロッドだ。

 極端なパラボリックアクションは、アオリイカを乗せやすいだけじゃなく、軽くて長時間のエギングにも疲れ知らずだった。そして身切れさせにくい低弾性のカーボンクロスは、いつしか「エギングロッドはこれしかない!」とまで言わしめる人気を誇っていた。

 このロッドは、当時のエギングを楽しんでいたアングラーにとって、手中にすることもひとつの目標になっていたようだ。シリーズは9ft(2pcs)、11ft(3pcs)、11ft(テレスコピック)の3種類からなり、漁港内で9ft、遠投が必要な港口では11ftを中心に使っていた。

 生産終了後はボクも多くのアングラーから相談を受けて、メーカーであるYO-ZURIさんだけじゃなく、問屋さんへの問い合わせまでして全国各地を探し回ったものだ。運良く入手することができたアングラーは、本当に喜んでいたのを今でも覚えている。

 このロッドは、エギをルアーアングラーへも展開したいとのメーカーさんの願いを込めて製作販売されたもの。ロッドケースには、オマケのエギが同梱されていたのも、当時としては斬新なアイデアだったと言える。

 のちに、ルアーアングラーを取り込むためにアオリーQを開発して、様々な特徴を持たせた現在のシリーズへと至っている。余談だけど、最初に登場したアオリーQは、今のような布巻き仕上げは存在せず、いわゆる「ヌリ」仕上げのものだけだった。

 ルアーアングラーを意識しすぎたために、ルアーと同じようなボディフィニッシュをしてしまっていたんだ。カラーも当然のように、アジやマッカレルといった模様のカラーリングが主体だった。

 いくらルアーアングラーにエギを浸透させたいといっても、従来からの布巻きをシリーズに入れないのはダメって談判したのを覚えている。ほどなくしてヌリは消えて、定番の布巻きが主流になったというわけだ。

 もちろんそれだけでエギが浸透するはずも無く、新アオリーQとしては、「スナッグレスシンカー」や、スイベルを利用した口糸を使わない「アイ」を採用することによって、視覚でルアーアングラーへと魅力を訴えた。

 当時から本誌の編集長がアオリイカ好きであったことも手伝って、エギングの話題を何度も誌面に登場させていただき、徐々に他のメーカーさんもエギング分野へと参入を始めてきた。

 今となってはごく普通に展開されているエギングだけど、当時はこんな涙ぐましい?努力も影で行なわれていたってことを知っていただけると嬉しい。人気が出てしまえば、われ先にと盛り上がりを見せるのがこの世界の常だ。

 誰が最初にやったとか関係なく、みんなで楽しめればそれでいい。ちょっと加熱しすぎた感のあるエギングだけど、釣り場を自業自得で無くすことのないように楽しんでもらえればそれでいい。

 ボクにエギングの一番楽しかった時代を経験させてくれたロッド「カトルクラッチ」は、今でもボクの横で思い出を語りかけてくれている・・・ような気がする(^^;


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