2009.08  Vol.4 アイルマグネットSB



今でも現役で販売されているアイルマグネットは、ボクにとって開発段階からの思い入れがあるルアーだ。SBとDBを同時進行で進めていたけれど、それぞれに衝撃的な出来事があった。とくにSBに関しては、手漕ぎボートでの実釣テストが楽しかったのを覚えている。


 アイルシリーズとの出会いは、フレッシュウオーター用のマイクロミノーから始まった。SR(シャロー)、DR(ディープ)、TC(トゥイッチャー)というレンジ攻略と特徴を持たせたルアーとして、バーサタイル攻略といううたい文句で市場へ登場した。

 このあとにソルトウオーター向けとして、ソルティーアイルが発売になった。そして本格的なソルトモデルとして、SB、DBという2種類が開発されることになった。

 サイズは125mmと105mmの2種類で、このサイズ選定にも当時の開発担当者とのいろいろなやり取りがあったことを覚えている。基本的にはシーバスをベースに考えていたんだけど、強烈なサラシの中でも確実に泳いで欲しいという強い願いが、DBには望まれていた。

 もちろんシーバスだけじゃなく、この頃は今よりも盛り上がっていたオフショアのシイラも、メインターゲットとして意識していた。そしてトップの楽しさを伝えるため、より扱いやすく、フックチューニングなどをユーザーが行っても、安定領域を広くすることによって万人向けのセッティングになった。

 この頃のボクは、シイラをかなり意識したセッティングの話もしながら、開発担当者とトライ&エラーを繰り返していた。とくに最終段階が近くなってからは、スプラッシュをよりやりやすく効果を出す形状を模索していた。

 サイズとしては、125mmが乗合船などの本格的なアングラー向け。この125mmに関しては、キャッチ&リリースをよりスムーズに行うことも考慮して、テールフックだけでも安定したスイムを出せるように意識している。

 だけどね、ホントにボクが楽しんじゃったのは、105mmのひと口サイズのほうなんだ。手漕ぎボートのルアーフィッシングも本格的に開拓していた時期だったから、ホントの意味でのライトタックルで扱うためには、105mmサイズがちょうど良かったってわけ。

 うまい具合にソルストの「手漕ぎボートがフィールドだ!」って連載をやっていた頃だったから、取材では市販前のSB105を使ったりもしていた。もちろんボディの作り方も最終的な手法ではない試作品もあったから、壊れちゃうこともあったっけ。

 ある取材釣行のとき、東伊豆のとある波の静かな湾内へ、良型のシイラが入ってきているとの情報を入手した。娘のharukaを連れて、友人と3人で手漕ぎボートでの釣行をすることになった。

 海岸からボートを漕ぎだすと、5分程度の近場でイワシの突き上げを発見した。そこでメタルジグを沈めると、40cm級のサバが入れ食いになった。船べりの水面上に置きっぱなしのルアーにまで飛びついてしまうほどの、異常とも言える活性の高さだった。

 この群れを少し楽しんでから沖に目を向けると、水面がザワザワしているエリアがあった。友人とボートを漕いで近づき、ルアーをキャストした。この時点で、その水面下にいる魚がシイラであることを確認できたので、ルアーをSB105に交換した。そして群れの向こう側へとキャストした。

 すると水面を割って、背中を出した状態でシイラがSBを追ってくるのが見えた。ここでSBの特徴的なアクションを活かすため、ロッドアクションで首振りさせながらリーリングした。シイラはそのままボートへ向かって突撃し、そして目の前1mほどの超至近距離でSBを咥えこんだ。

 このとき一緒にボートへ乗っていたharukaは、向かってくるシイラに衝撃を感じて「怖かった〜」とあとで話していた。ボク自身もこれほどスリリングな経験は初めてで、手漕ぎボートなので目線が低いことで、興奮度120%の面白さを初めて知ったのだった。

 水にもの凄く近い状態で、派手なシイラの捕食を目の前で見ることができた。手が届くほどの船べりで起きたことなので、ある種の感動ですらある。こんな経験をさせてくれたのが、アイルマグネットSB105mmだった。

 最近は手漕ぎボートでルアーをキャストしてないけれど、今でも自分に向って口を開いて向かってくるシイラの姿は忘れられない。メータークラスのシイラをハンドランディングしたのも、これが初めての経験だった。

 SBたちは、今でも進化したモデルが継続して市販されている。他にも面白いターゲットはいるはずなので、より多くのアングラーの皆さんに、こんな衝撃的な出会いを経験してもらえればと思う。


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